ゴードン・セターは、スコットランド原産の大型鳥猟犬です。黒地にタン(褐色)の被毛が特徴で、セター種の中では最も大柄とされています。家族には忠実で穏やかな一方、運動量が多く、成熟もゆっくりだといわれます。この記事では、成り立ち、性格、日本の住環境で気をつけたい点、迎える前に確認したいこと、かかりやすい病気までを、犬種クラブや獣医師向けメディアの情報をもとに整理します。
| 原産国 | イギリス(スコットランド) |
| 体高 | 58〜69cm程度(JKC犬種標準はオス66cm・メス62cm) |
| 体重 | 20〜36kg程度(JKC犬種標準はオス29.5kg・メス25.5kg) |
| 性格の傾向 | 忠実で穏やか、賢いといわれる |
| 平均寿命 | 10〜13年程度(情報源により異なる) |
ゴードン・セターの成り立ち
ジャパンケネルクラブ(JKC)の犬種標準によると、ゴードン・セターは、セターの仲間の中で最も新しく公認された犬種です。1820年ごろ、ゴードン城の領主で狩猟家だったアレキサンダー・ゴードン公爵が作出に関わったとされ、犬種名はこの名前に由来します。作出の方法には、スコッチ・コリーを加えたという説と、ブラッドハウンドやトライカラーのコリーと交配したという説があると説明されています。スコットランドで唯一のガンドッグ(銃猟犬)で、セターの中では最大で、耐久力に富むとされています。同じセターの仲間については、アイリッシュ・セターとイングリッシュ・セターの記事も参考にしてください。
VCA Animal Hospitalsは、黒とタンのセターの祖先は16世紀のスコットランドとイギリスに現れ、現在の犬種は1820年代に登場したと説明しています。Wikipediaは、「ブラック・アンド・タン・セター」と呼ばれていた時代を経て、1924年に英国のケネルクラブが「ゴードン・セター」の名を採用したと紹介しています。アメリカへは1842年にダニエル・ウェブスターらが繁殖用のつがいを持ち込み、AKCの公認はその約50年後とされています(VCA)。
ゴードン・セターの性格
JKCの犬種標準では、利口で有能で、勇敢かつ外向的、穏やかで安定した性格とされています。獣医師が確認したPetMDは、周囲によく気を配る忠実な犬で、友好的でやさしく、家の中では落ち着いて過ごす犬としています。VCAは、とても賢く、愛情深く、忠実だと表現しています。
成熟がゆっくりで、子犬らしい時期が長い
VCAによれば、子犬らしい時期が4歳ごろまで続くことがあり、ラブラドール・レトリバーやゴールデン・レトリバーが2〜3歳で成熟するのと比べて、ゆっくりだと説明されています。Wikipediaも、成熟が遅い犬種の一つで、3歳ごろまで本来の落ち着きに達しないことが多いと紹介しています。しばらくは体が大きく元気な状態が続くため、家の中での過ごし方を、根気よく教える必要があります。
やさしいが、指示にはやや頑固な面も
VCAは、やさしい性格でありながら、ときどき指図したがる面があり、飼い主の時間を求める犬だと述べています。しつけについて、VCAは一貫しつつおだやかな訓練を勧め、厳しく叱ると心を閉ざすことがあるとしています。PetMDも、ほめる・おやつを使う方法で、子犬のころから服従訓練を始めること、獲物を追う習性があるため、呼び戻しの練習が特に大切であることを案内しています。
初対面の人、子ども、鳴き声
PetMDは、知らない人には最初は慎重になることがあるとしています。一方、VCAは「見知らぬ人にも友好的」と述べており、情報源により異なります。子どもについて、PetMDは、子犬のころから慣らしておけばうまくやれることが多いとしつつ、大人が見守るよう案内しています。Wikipediaは、成犬になってもにぎやかなため、非常に幼い子どもがいる家庭には向かない場合があると紹介しています。鳴き声は、家族への知らせや要求のために吠えるものの、過度に吠える犬ではないとされますが、退屈すると吠えが増え、物を壊すことがあるそうです(PetMD)。
身体的特徴
- 体高:JKCではオス66cm、メス62cm。PetMDとVCAは23〜27インチ(約58〜69cm)、Wikipediaはオス24〜27インチ(約61〜69cm)、メス23〜26インチ(約58〜66cm)
- 体重:JKCではオス29.5kg、メス25.5kg。PetMDは45〜80ポンド(約20〜36kg)、VCAは同じページ内で45〜80ポンドと55〜80ポンドの2通り(約20〜36kg、約25〜36kg)、Wikipediaはオス55〜80ポンド(約25〜36kg)、メス45〜70ポンド(約20〜32kg)
- 被毛:長く、羽毛のような飾り毛があり、からまりやすい毛です(PetMD)。VCAは、長くなめらかな被毛で抜け毛が多いとしています
- 毛色:JKCでは、濃く輝くコール・ブラックに、チェスナッツ・レッドのタンが入ります。目の上、マズル、喉、胸、脚などにタンがあり、胸の小さな白い斑は許容されます
- 耳:長く垂れた耳をもちます(PetMD)
体高と体重は、情報源により幅があります。JKCは標準の値を、PetMDなどは一般的な範囲を示しているため、数値の性質が違う点に注意が必要です。適正な体重は、体格や年齢で異なるため、動物病院で相談してください。
飼い方のポイント
運動
PetMDは、少なくとも1日1時間の運動が必要とし、ハイキング、ランニング、長い散歩や、頭を使う遊びを挙げています。Wikipediaは、1日60〜80分の活発な運動を挙げ、18か月未満の犬には、関節を守るため、激しい運動やアジリティを避けるよう案内しています(Wikipediaのみの記載)。VCAは、運動量を「非常に高い」とし、毎日運動させると落ち着きが出るものの、留守番は「たっぷり運動させたあと」でなければ向かないとしています。
被毛・耳・足のケア
PetMDは、週1回のブラッシングでからまりを防ぎ、足指の間の毛を整え、長く垂れた耳は、泳いだあとやシャンプーのあとに掃除するよう案内しています。一部の犬は、季節性のアレルギーで皮膚がかゆくなることがあるとされます。VCAは、毎日のブラッシングと、足の手入れを週1回挙げており、手入れの頻度は情報源により異なります。耳の掃除は、やり方や頻度を獣医師に確認しておくと安心です。
食事と胃捻転への配慮
PetMDは、胃捻転の危険を考え、高さのある食器台を避ける、食事の前後1時間は運動を控える、早食い防止の食器を使う、食事を数回に分けるなどの工夫を紹介しています。サプリメントは、獣医師に相談してから与えるよう述べています。
日本の住環境で気をつけたいこと
集合住宅と体格
成犬は20〜36kg程度になるため、日本の集合住宅では、管理規約に、飼育できる大きさや頭数の制限がある場合は、当てはまる可能性があります。PetMDとVCAのページには、集合住宅についての記載は見当たりませんでした。VCAは、柵のある庭、またはそれに代わる運動の場所を持つ家庭が向くと述べています。運動の場所を、庭がなくても確保できるか、事前に具体的に考えておきたい点です(編集部の考察)。
散歩中の呼び戻しと脱走
PetMDは、獲物を追う本能が強く、鳥を追って思わぬ場所に入り込むことがあるため、リードをつけるか、しっかり囲われた場所で過ごさせるよう案内しています。日本では、散歩中に公園の鳥や小動物に出会う場面が多く、リードの持ち方、ハーネスの選び方、ドッグランなど柵のある場所の利用を考えておくと無難です(編集部の考察)。
夏の暑さと長い被毛
今回確認したPetMDとVCAのページに、暑さ寒さへの強さの記載は見当たりませんでした。長い被毛の大型犬は、熱がこもりやすいと一般に考えられるため、日本の梅雨から夏は、エアコンで室温と湿度を管理し、散歩は朝夕の涼しい時間にすることが無難です。被毛のブラッシングで皮膚の風通しを保つことも考えられます(編集部の考察)。息が荒い、ぐったりするなどの様子があれば、すぐ動物病院へ連絡してください。
抜け毛と室内の掃除
VCAは、長くなめらかな被毛が多く抜けると述べています。日本の住宅では、フローリングやカーペットに毛が溜まりやすいため、毎日のブラッシングと、掃除機をかける習慣をあらかじめ家族で決めておくと、手入れが続けやすくなります(編集部の考察)。
迎える前に確認したいこと
- 運動の時間:毎日、1時間以上の運動と頭を使う遊びを続けられるか
- 留守番:VCAは、たっぷり運動させてからでなければ留守番に向かないとしています。日中の留守が長くならないか
- 住まい:飼育できる大きさの制限がないか。リードなしで過ごせる、柵のある運動の場所を確保できるか
- 手入れの手間:毎日または週1回のブラッシング、耳の掃除、足の手入れを続けられるか
- 成長の時間:子犬らしい時期が数年続くことを受け止め、根気よくしつけられるか
- 親犬の検査:PetMDは、進行性網膜萎縮症の検査をブリーダーが行うことや、検査結果の提示を求めることを案内しています。VCAは、股関節と眼の検査(OFAとCERF)の結果を確認するよう述べています
- 入手のしやすさ:PetMDとVCAは、数が少なく、見つけにくい犬種だと紹介しています。日本での飼育頭数や価格は、今回の調査では確認できませんでした
- 費用の見通し:大型犬のため、フード代や医療費がかかりやすい傾向があります。PetMDは、病気の治療費が高額になりうるとして、ペット保険の検討に触れています
- 法律上の手続き:91日齢以上の犬は、飼い始めてから30日以内に市町村へ登録し、毎年1回の狂犬病予防注射を受けさせる必要があります(厚生労働省)
- 終生飼養:動物愛護管理法では、終生飼養が明文化されています(環境省)
かかりやすい病気
ゴードン・セターがかかりやすいとされている病気には、以下のようなものがあります。すべての個体がかかるわけではありません。気になる症状があれば、自己判断せず必ず獣医師に相談してください。
- 胃拡張・胃捻転症候群:胃にガスがたまって膨らみ、ねじれることで血流が妨げられる、命に関わる緊急性の高い病気です。胸の深い犬種に多いとされます。PetMDは、吐こうとしても吐けない、お腹が膨らむ、よだれが多い、落ち着きなく歩き回る、食欲がないなどを警戒サインとし、すぐに動物病院へ連絡するよう述べています。予防的な胃固定術について、獣医師に相談する案内もあります。
- 股関節形成不全:股関節がゆるく、痛みや関節炎につながる病気です。PetMDは、車の乗り降りをいやがる、足を引きずる、跛行(びっこ)などがサインになるとしています。体重管理、サプリメント、重い場合は手術が検討されることがあります。
- 進行性網膜萎縮症:光を感じる網膜の細胞が壊れ、視力が失われる遺伝性の病気です。PetMDは、根本的な治療法はないものの、視力を失った犬も、適切なケアで穏やかに暮らせるとしています。Wikipediaは、この犬種で利用できる遺伝子検査が2011年に使えるようになったと紹介しています(Wikipediaのみの記載)。
- 甲状腺機能低下症:甲状腺ホルモンが足りなくなる病気です。PetMDは、食事や運動を変えていないのに太る、元気がない、被毛がぱさつく、暖かい場所を好む、皮膚や耳の炎症をくり返すといったサインを挙げ、飲み薬で長期に管理するとしています。
このほか、PetMDは年1回の健康診断で白内障の有無も確認するよう案内しており、Wikipediaも白内障を挙げています。視力が落ちた様子や、目の濁りに気づいたら、早めに獣医師へ相談してください。
平均寿命
PetMDでは12〜13年、VCAでは10〜13年、Royal Canin(米国)では10〜12年とされており、情報源により異なります。Wikipediaは、英国の2024年の調査で12.4年と紹介しています。10〜13年程度がひとつの目安です。個体差があり、飼育環境や健康管理によっても変わります。
まとめ
ゴードン・セターは、黒とタンの美しい被毛をもつ、忠実で賢い大型の鳥猟犬です。毎日の十分な運動、呼び戻しの練習、成熟がゆっくりな点への心構え、長い被毛と耳の手入れ、胃捻転や関節などの病気への注意が必要になります。日本の暮らしでは、体格に合う住まいと運動の場所、夏の暑さへの備えを、家族全員で確認してから検討することが望ましいです。気になる症状があれば、自己判断せず必ず獣医師に相談してください。
参考情報源
- ジャパンケネルクラブ「ゴードン・セター」(犬種標準)
- PetMD「Gordon Setter」
- VCA Animal Hospitals「Gordon Setter」
- Wikipedia「Gordon Setter」
- Royal Canin(米国)「Gordon Setter」
- 厚生労働省「狂犬病に関するQ&A」
- 環境省「動物の愛護及び管理に関する法律」
ゴードン・セターと暮らす人へ
本記事は、JKC(ジャパンケネルクラブ)等の公的資料や獣医療・ペット関連の専門メディアの情報をもとに、編集部で内容を確認のうえ作成しています。編集方針の詳細は運営者情報をご覧ください。



