ウェルシュ・テリアは、ウェールズ原産の小型テリアです。エアデール・テリアに似た容姿を持ち、より小柄なサイズが特徴といわれています。陽気で人なつこい一方、吠えやすさや穴を掘る習性、硬い被毛の手入れなど、迎える前に知っておきたい点もあります。この記事では、成り立ち、性格、日本の暮らしで気をつけたい点、迎える前に確認したいことまでを、犬種標準や獣医関連メディアの情報をもとに整理します。
| 原産国 | イギリス(ウェールズ) |
| 体高 | 約38〜39cm程度(JKC標準は39cmを超えない) |
| 体重 | 9〜10kg程度 |
| 性格の傾向 | 陽気で友好的、活発といわれる |
| 平均寿命 | 12〜15年程度(9〜15年とする解説もある) |
ウェルシュ・テリアの成り立ち
JKCの犬種標準によると、ウェルシュ・テリアは実際に作業犬として使われてきた犬種で、もともとキツネ、アナグマ、カワウソの猟に用いられていました。レークランド・テリアとよく似ており、ケルト人がローマの侵攻前に山や湖水地方へ退いたころは、両犬種が共通の血統だった可能性があると説明されています。アニコム損保の解説も、イギリス北ウェールズ地方が原産で、猟犬として、またネズミなどの害獣駆除に活躍してきたとしています。
VCA Animal Hospitalsは、早ければ1200年ごろから、中型の黒とタン(茶色)のテリアが害獣などの猟に使われ、それがオールド・イングリッシュ・テリアやブラック・アンド・タン・テリアを経て、のちにウェルシュ・テリアと呼ばれたとしています。英国のケネルクラブが公認したのは1886年で、1888年にアメリカへ持ち込まれました。Wikipediaは、18世紀ごろにはウェールズに存在したと考えられているとしており、起源の年代については説が分かれています。
見た目が似ているテリアについては、エアデール・テリアの性格・特徴・飼い方や、レークランド・テリアの性格・特徴・飼い方の記事も参考にしてください。
ウェルシュ・テリアの性格
JKCの犬種標準は、情が深く素直で、扱いやすい犬としています。明るく活発で、人見知りすることはほとんどなく、勇敢で怖いもの知らずですが、攻撃的ではないと述べています。AKCのページも、ほかのテリアと同じく用心深く元気であるものの、多くのテリアより落ち着いており、「勇敢だが、けんかっ早くない」と表現されることがあると紹介しています。PetMDは、ウェルシュ・テリアクラブの説明として、友好的で外向的な犬だとしています。
一方で、テリアらしい面もあります。アニコム損保は、いたずら好きで頑固なところがあるため、幼いころから飼い主がしっかり導き、指示に従う習慣をつけることが必要としています。PetMDは、獲物を追う本能が強く、よく吠える犬として知られていると述べています。VCAは、家族の中での自分の立場を理解するまでは、おとなしく従う様子はあまり見られないとしています。しつけは、ごほうびを使った前向きな方法が合うと、PetMDは案内しています。
身体的特徴
- 体高:JKCの犬種標準では39cmを超えない大きさです。Wikipediaも最大で約39cmとしています。PetMDは約15インチ(約38cm)、VCAは15〜16インチ(約38〜41cm)としています
- 体重:JKCの犬種標準では9〜9.5kgです。PetMDは約20ポンド(約9kg)、Wikipediaは20〜22ポンド(約9〜10kg)、VCAは20〜25ポンド(約9〜11kg)としています
- 被毛:針金のように硬い上毛と、柔らかい下毛のダブルコートです(PetMD、アニコム損保)。JKCの犬種標準が好ましいとする毛色は、ブラック&タンまたはブラック・グリズル&タンです
- 体つき:JKCの犬種標準は、均整のとれたコンパクトな体つきと表現しています
体高は、JKCの数字が上限値(39cmを超えない)として書かれている点に注意が必要です。実際の個体の大きさは、それより小さい場合もあります。体重も個体差があり、数字は目安として捉えてください。PetMDは、太りやすい犬種なので食事の量を量るよう案内しています。
飼い方のポイント
被毛ケア
PetMDは、週1〜2回のブラッシングで毛玉を防ぎ、プロのグルーミングは2〜3か月ごと、シャンプーも2〜3か月ごとを目安として挙げています。年に2〜3回毛が生え変わり、手で古い毛を抜くハンド・ストリッピングが必要になることもあるとしています。VCAは、適切に手入れしていれば抜け毛は非常に少ないとしています。耳の掃除と爪の手入れも、あわせて必要です。
運動
アニコム損保は、身体能力が高くエネルギッシュなので、毎日の散歩などで十分に運動させるよう案内しています。PetMDは、1日に1〜2時間ほどの運動として、長い散歩、速足でのランニング、ボール遊びなどを挙げています。VCAは、毎日の散歩に加え、走る、遊ぶ時間を設けることを案内しています。
穴掘りと呼び戻し
アニコム損保は、テリアらしく穴掘りが大好きとしています。PetMDは、獲物を追う本能が強いため、屋外ではリードをつけるか囲いのある場所で過ごし、呼び戻しをしっかり教えておくよう案内しています。社会化と基本のしつけは、16週齢より前に始めるとよいとされています。
日本の住環境で気をつけたいこと
集合住宅と吠え声
PetMDは、庭のある暮らしに向く一方、毎日の散歩や運動があればアパート暮らしにも合わせられるとしています。VCAは、よく吠えるので集合住宅には向かないと述べています。情報源によって見方が分かれており、実際には、運動量や吠え声への対処ができるかどうかが分かれ目になりそうです。日本の集合住宅では管理規約で飼える犬の大きさや頭数が決まっていることもあるため、迎える前に確認が必要です。
運動の場所と時間の確保
1日に1〜2時間とされる運動量を、住宅街の散歩で確保できるかを考えておく必要があります。仕事で時間が限られる場合は、朝と夕方に分けるなどの工夫をすると続けやすくなります。ドッグランを使うときは、ほかの犬との相性を見ながら慣らすことが大切です。
ワイヤーコートの手入れと梅雨の湿気
硬い被毛を整えるトリミングは、犬種に慣れたトリマーに頼むと安心ですが、日本のサロンでは、ハンド・ストリッピングに対応しているかどうかは店によって異なります。迎える前に、通えるサロンを探しておくと安心です。梅雨の時期は、散歩のあとに被毛と耳をよく乾かし、PetMDが案内するとおり、入浴や水遊びのあとに耳を掃除することが大切です。
迎える前に確認したいこと
- 運動と頭を使う時間:毎日1〜2時間ほどの運動に加え、遊びや簡単なトレーニングの時間を確保できるか
- 吠え声への備え:集合住宅の場合、管理規約や近隣への配慮の方法を確認できているか。子犬のうちから吠える場面に慣らしていけるか
- 被毛の手入れ:自宅でのブラッシングと、2〜3か月ごとを目安とするトリミングに対応できるサロンを近くで探せるか
- 庭や玄関の対策:穴を掘って外に出たり、獲物を追って飛び出したりしないよう、囲いや玄関まわりの対策ができるか
- 他の動物との暮らし:PetMDは、獲物を追う本能が強いと述べています。猫や小動物がいる家庭では、慣らし方を考えておくこと
- 親犬の健康:VCAは、繁殖に使う犬には、股関節などの整形外科的な検査(OFA)と目の検査(CERF)を受けさせ、ブリーダーに結果を確認することを案内しています
- 費用の見通し:フード代、トリミング代、医療費などが、10年以上続く費用として考えられるか。ペット保険は入るべきか?メリット・デメリットの記事も参考になります
- 法律上の手続き:生後91日以上の犬は、飼い始めてから30日以内に市町村へ登録し、狂犬病の予防注射を毎年1回受けさせる必要があります(厚生労働省)
- 終生飼養:動物愛護管理法は、平成24年の改正で、飼い主が最後まで責任をもって飼うこと(終生飼養)を明文化しています(環境省)
かかりやすい病気
ウェルシュ・テリアがかかりやすいとされている病気には、以下のようなものがあります。健康面の情報は情報源によって挙げられる病気が異なり、ここでは複数の解説で共通するものを中心に紹介します。すべての個体がかかるわけではありません。気になる症状がある場合は自己判断せず、必ず獣医師に相談してください。
- 緑内障:目の中の圧力が高くなる病気です。PetMDとVCAがあげています。PetMDは、3歳未満の犬に多いとし、まばたきが多い、目が赤い、目が出て見える、目やにが出るといった様子を挙げています。Wikipediaは、水晶体が本来の位置からずれる病気(水晶体脱臼)との関わりも紹介しています(一部の解説での記載)
- てんかん:原因がはっきりしないまま、発作を繰り返す病気です。PetMDとVCAがあげています。PetMDは、多くは1〜4歳ごろに始まるとし、意識を失う、全身がふるえる、鳴き声をあげるといった様子を挙げています
- アトピー性皮膚炎(アレルギー):環境中のアレルゲンなどが関わる、かゆみの強い皮膚の病気です。PetMDは、多くは生後6か月〜3歳ごろに始まり、掻く、毛が抜ける、皮膚が厚くなるといった様子を挙げています。VCAもアレルギーを主な心配事としています
- 甲状腺機能低下症:甲状腺ホルモンが不足して代謝が落ちる病気です。体重が増える、元気がない、毛がうすくなる、皮膚や耳の炎症を繰り返すといった様子が見られることがあります(VCAでの記載)
- 関節や骨の病気:PetMDは、股関節形成不全、膝蓋骨脱臼(膝のお皿の骨が外れる)、レッグ・カルベ・ペルテス病(子犬の大腿骨の血流が落ちる病気)をあげています。足を引きずる、立ち上がりが遅い、階段やジャンプをためらうといった様子が目印とされています(一部の解説での記載)
定期的な健康診断を受け、目の様子、体重、皮膚の状態、歩き方を日ごろから確認しておくと、変化に気づきやすくなります。気になる様子があれば、獣医師に相談してください。
平均寿命
PetMDは12〜15年、VCAは9〜15年としており、情報源によって幅があります。ここでは12〜15年程度をひとつの目安としています。ただし個体差があり、飼育環境や健康管理によっても変わります。
まとめ
ウェルシュ・テリアは、陽気で人なつこく、テリアの中では比較的落ち着いた気質といわれる小型犬です。一方で、獲物を追う本能、穴掘り、吠えやすさ、ワイヤーコートの手入れ、1日1〜2時間とされる運動量といった負担もあります。性格や手入れの手間、費用を踏まえ、家族全員で迎える準備ができているか確認してから検討することが望ましいです。気になる症状があれば、自己判断せず必ず獣医師に相談してください。
参考情報源
- ジャパンケネルクラブ「ウェルシュ・テリア」(犬種標準)
- アニコム損害保険「ウェルシュ・テリア」(どうぶつ図鑑)
- PetMD「Welsh Terrier Dog Breed Health and Care」
- VCA Animal Hospitals「Welsh Terrier」
- American Kennel Club「Welsh Terrier」
- Wikipedia「Welsh Terrier」
- 厚生労働省「狂犬病に関するQ&A」
- 環境省「動物愛護管理法」
ウェルシュ・テリアと暮らす人へ
本記事は、JKC(ジャパンケネルクラブ)等の公的資料や獣医療・ペット関連の専門メディアの情報をもとに、編集部で内容を確認のうえ作成しています。編集方針の詳細は運営者情報をご覧ください。



