「ウェットフードの量は、1日にどれくらい?」「ドライフードと混ぜるとき、ドライはどれだけ減らせばいいの?」「缶やパウチだけで毎日あげても大丈夫?」。ウェットフードは「1缶」「1パウチ」という単位で売られていることが多く、量の感覚がつかみにくいフードです。結論から言うと、ウェットフードの量は「グラム(重さ)」ではなく「カロリー(kcal)」で考えるのが基本です。ウェットフードは水分が約75%と多く、同じ重さでもドライフードよりカロリーがずっと低いため、重さのまま置き換えると量が合わなくなりやすいからです。この記事では、環境省のガイドラインと、獣医師が関わる解説をもとに、ウェットフードを主食にする前の確認点、ドライフードとの置き換えの計算、食いつきが落ちたときやシニア犬での使い方をまとめます。少量を足す「トッピング」の量は「犬のごはんのトッピング、量はどれくらい?」、ウェットとドライの特徴の比較は「ウェットフード・ドライフードの違いと選び方」、開封後の保存は「ドッグフードの保存方法と賞味期限の読み方」で紹介しているため、この記事では「主食の一部または全部としてウェットフードを使うときの量と使い方」に絞っています。
ウェットフードを主食にする前に:パッケージの「総合栄養食」表示を確認
環境省の「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」は、ペットフードを目的別に「総合栄養食」「間食(おやつ・スナック)」「その他の目的食」に分けています。毎日のごはんの中心にできるのは、犬に必要な栄養素をすべて含み、新鮮な水と一緒に与えるだけで健康を維持できるよう栄養バランスが調整された「総合栄養食」です。
ウェットタイプは、環境省によると水分含量が75%程度で、缶詰・アルミトレイ・レトルトパウチなどに詰められたフードです。風味が良く食べやすいことから、犬が好む傾向があるとされています。ただし、ウェットフードには総合栄養食のほかに、嗜好増進などの目的で与える「副食・おかずタイプ」もあり、パッケージには「一般食(おかずタイプ)」「一般食(総合栄養食と一緒に与えてください)」「副食」などと表示されます。環境省は、こうした「その他の目的食」では、同時に与えなければならない主食や食材の名前、給与方法や量が書かれていると説明し、獣医師の指導のもとで与えるべきだとしています。
缶やパウチを毎日の主食にするなら、まず「総合栄養食」と書かれているかを確認しましょう。「一般食」「副食」と書かれているものは、主食に足して使う前提のフードです。この記事の量の考え方は、総合栄養食どうし(ドライとウェット、またはウェットだけ)を組み合わせる場合を前提にしています。
ウェットとドライは、同じ重さでもカロリーが大きく違う
水分含量は、環境省のガイドラインではドライタイプが10%程度かそれ以下、ウェットタイプが75%程度です。ロイヤルカナンの解説ページでは、ドライが約8%、ウェットが通常約75%と紹介されています。同ページは、100gあたりのカロリーの例として、ドライフードが約370kcal、ウェットフードが約100kcalを挙げ、同じエネルギーをとるのに必要な重さは、ドライのほうがウェットよりおよそ3〜4倍少なくて済むと説明しています。
米国の動物病院グループVCAのサイト(カナダ動物栄養学会の獣医師らが執筆)も、缶詰フードは水分が多いぶんエネルギー密度(100gあたりのカロリー)が低く、同じカロリーを得るためにキブル(ドライ)より多い量を食べられると説明しています。あわせて、缶詰はカロリーあたりの価格がキブルより割高になりやすい点にも触れています。
ヒルズの解説は、米国飼料検査官協会(AAFCO)が、缶詰は水分のために「そのままの状態」での1kgあたりのカロリーがドライより少なくなるとして、フードの種類が違うもの同士をカロリーで単純に比べることに注意を促していると紹介しています。日本でも、環境省のガイドラインによると、多くのフードにはカロリー(kcal/kg)の表示があります。「1缶」「1カップ」といった見た目の量ではなく、使うフードそれぞれのパッケージのkcal表示を見て計算するのが確実です。
ドライとの置き換え:カロリーで計算する3ステップ
- 1日に必要なカロリーを知る:環境省のガイドラインの参考値では、成犬の体重5kgで約441kcal、10kgで約742kcalです(運動量や年齢、避妊去勢の有無などで変わります)。愛犬の目安は、体重や年齢を入れて計算できるごはんの目安カロリー計算ツールで確認できます。
- ウェットフードで賄うカロリーを決め、量を出す:ウェットの量(g)= ウェットで賄うkcal ÷ パッケージの「100gあたりのkcal」× 100。1缶あたりのkcalが書かれている場合は、そこから逆算します。
- 残りをドライフードで賄う:ドライの量(g)=(1日のkcal − ウェットのkcal)÷ ドライの「100gあたりのkcal」× 100。おやつやトッピングを与える日は、その分のkcalも1日のkcalから差し引きます。
計算の例(体重5kgの成犬)
1日の参考カロリーを環境省の参考値の約441kcalとし、ドライを100gあたり370kcal、ウェットを100gあたり100kcalと仮定した計算例です(この2つの数字はロイヤルカナンの解説ページに載っている例で、実際の製品では大きく異なります)。
| パターン | ウェット | ドライ |
|---|---|---|
| ドライのみ | 0g | 約119g |
| ウェットで約25% | 約110g | 約89g |
| ウェットで約50% | 約220g | 約60g |
| ウェットのみ | 約441g | 0g |
この表からは、ウェットで25%分を賄うとドライは約4分の1減り、ウェットで約半分を賄うとドライは半分ほどになることが分かります。反対に、ドライを減らさずにウェットを足すとどうなるかも計算してみます。ドライ約119g(約441kcal)に、ウェット約110g(約110kcal)を足すと、合計は約551kcalになり、1日の目安より約25%多くなります。ヒルズの解説も、量を調整せずにフードを足すと、時間とともに体重の増加につながるおそれがあると注意しています。
なお、ウェットフードをどのくらいの割合にするかについて、今回確認した環境省・VCA・ヒルズ・ロイヤルカナンの資料には、決まった割合は示されていませんでした。ヒルズは、総合栄養食どうしであること、カロリーが管理されていること、変更を少しずつ進めることを条件に、ウェットとドライを組み合わせられるとしています。1日のカロリー目標や、それぞれの量の計算は、かかりつけの獣医師に相談できます(ヒルズ、VCA)。
計算した量は、あくまでスタート地点です。環境省のガイドラインも、パッケージの量の目安だけに頼らず、運動量や体調をよく観察して量を調節するよう案内しています。体型の見方として、同ガイドラインのボディコンディションスコア(BCS)では、理想的な状態(BCS3)は、過剰な脂肪の沈着なしに肋骨が触れる状態とされています。体重を定期的に量り、肋骨に触れるかを確かめながら、量を微調整していきましょう。肥満が気になる場合は「犬の肥満・体重管理」も参考にしてください。
混ぜる?分ける?
ロイヤルカナンの解説ページは、ドライとウェットを同じボウルに混ぜる必要も、同じタイミングで与える必要もないとしています。たとえば、ドライを日中に、ウェットを夜に与える方法もあると紹介されています。ただし、環境省のガイドラインでは、ドライフードもお皿に出すと時間とともに香りや食感が失われ、犬がいったん口をつけたものは唾液がつくため、できるだけ少量ずつ出して新しいものに取り替えるよう案内されています。ウェットは出しっぱなしを避け、給与時間を20分程度の目安にするとされています(環境省)。分けて与えるときも、出す時間と量を決めておくと管理しやすくなります。
ウェットに慣れると、ドライが物足りなく感じることも
ロイヤルカナンの解説ページは、ボリュームの多いウェットフードに慣れた犬は、ドライフードだと量が少なく感じて追加を求めることがあり、その追加分は体が必要としないカロリーになるおそれがあると注意しています。ごはんの量は、見た目のボリュームではなくカロリーで管理していることを、家族全員で共有しておくと安心です。
ウェットフードだけで与えるとき
ウェットフードだけを主食にする場合も、前提は「総合栄養食」であることです。そのうえで、次の点に気をつけましょう。
- 量が多くなる:上の計算例では、体重5kgの成犬で1日約441g(仮定の数字)になります。ラベルのkcalで、実際に必要な量を確かめましょう。
- 費用はカロリーで比べる:VCAは、缶詰はカロリーあたりでは割高になりやすいとしています。1缶の値段ではなく、1日に必要なkcal分の費用で比べると、実際の負担が見えます。
- 水の用意は続ける:ウェットフードは水分が75%程度と多いのですが、環境省のガイドラインは、フードの水分量にかかわらず、いつでも新鮮な水が飲めるようにするよう案内しています。
- 歯のケアを別に考える:環境省は、ドライフードは噛むことで歯垢がつきにくくなることが期待できるとする一方、健全な歯を保つには定期的な歯磨きの習慣と、獣医師の診察で歯垢や歯石をとってもらうことも大切だとしています。VCAは、缶詰には、ドライの一部にあるような歯の健康をうたう製品はないとしています。ウェット中心にするなら、歯磨きなどのデンタルケアを意識しておきましょう。
こんなときのウェットフードの使い方
食いつきが落ちたとき
ヒルズは、ウェットフードは食感が柔らかく香りが強い傾向があり、食べ物の好みがはっきりした犬には魅力的に映ることがあると説明しています。VCAは、缶詰を「やさしく」温めると香りが立ち、食べやすくなることがあるとしています。ただし、ごはんを食べない状態が続くときは、フードを工夫する前に体調を疑う必要があります。環境省のガイドラインは、正常な犬でもフードを1〜2日食べない個体はいるものの、積極的に食べない場合は病気の前兆と考えてよいとしています。原因の見分け方と受診の目安は「犬がごはんを食べない」で紹介しています。
また、ウェットで食べるようになったからといって、そのまま割合を増やし続けると、ドライを食べなくなる、量が増えすぎるといったことも起こりえます。食べ残しは、お皿に出して約30分たったものは捨てるのがよいとVCAは案内しています(環境省は20分程度が目安)。食べ残しが多い犬では、無駄になりにくい量から始めましょう。
シニア犬や、噛む力が弱くなったとき
ヒルズは、ウェットフードは一般にドライより噛みやすいと説明しています。ロイヤルカナンの解説ページも、ドライフードは噛むのが大変で、食べるのに苦労する犬もいるようだと紹介しています。シニア犬では、ウェットフードを取り入れることで食べやすさを調整できる場合があります。ただし、食べるときに痛がる、食べこぼしが増えた、口のにおいが強くなったといった様子があるときは、歯や口の中のトラブルが隠れているかもしれません。フードを変えるだけで済ませず、動物病院で口の中を診てもらいましょう。ライフステージ別の選び方は「老犬用ドッグフードおすすめランキングTOP5」も参考にしてください。
持病があるとき・療法食を食べているとき
ヒルズは、特定の必要に合わせて選んだフードでは、別のフードを混ぜることで、そのフードの良さが損なわれるおそれがあるとしています。療法食を食べている犬や持病のある犬は、ウェットを足したり置き換えたりする前に、必ずかかりつけの獣医師に相談してください(環境省も、その他の目的食や療法食は獣医師の指導のもとで与えるべきとしています)。療法食と普通のフードの違いは「療法食とは?普通のフードとの違い」で解説しています。
切り替えは少しずつ:ふだんから少量に慣らす方法も
ドライだけを食べていた犬に、突然たくさんのウェットを与えると、下痢になることがあるとロイヤルカナンは説明しています。環境省のガイドラインも、食べなれていないフードに急に切り替えると、吐いたり下痢をしたりすることがあるため、状態を見ながら1週間くらいかけて割合を増やすよう案内しています。具体的な手順は「ドッグフードの切り替え方」で紹介しています。
VCAは、若いうちからいろいろな形状のフードに慣れておくと、のちの切り替えが楽になるとしています。たとえば、将来、病気で缶詰タイプの療法食しか選べなくなったとき、缶詰を食べたことがないと受け入れにくいことがあるためです。ロイヤルカナンも、複数のフードに慣れていれば、歯の病気などでウェットに切り替える必要が出たときもスムーズにいきやすいとしています。
開封後・食べ残しの扱い(要点だけ)
環境省のガイドラインは、開封後に余った缶詰やレトルトフードは、別の容器に移して冷蔵し、できるだけその日のうちに使い切るよう案内しています。VCAは、開封後は冷蔵し、3日たったら残りを捨てるとしています。案内の幅があるため、購入した製品の表示に従い、迷ったときは短いほうに合わせるのが無難です。未開封の缶の保存方法、冷凍するときの注意、においや見た目で傷みを見分けるポイントは「ドッグフードの保存方法と賞味期限の読み方」にまとめています。
ウェットフードを使うときの注意点
- 主食にするなら「総合栄養食」の表示を確認する。「一般食」「副食」は、記載の使い方に従う
- 置き換えは、グラムではなくラベルのkcalで計算する。ドライを減らさずにウェットを足さない
- 量は目安。体重と体型(肋骨に触れるか)を定期的に確かめ、増減があれば量を見直す
- 切り替えは少しずつ。便の状態を見ながら進める
- 食べ残しは出しっぱなしにせず、開封後の缶・パウチは冷蔵して早めに使い切る
体質に合わない様子や、下痢・嘔吐、食欲の低下などの体調変化が見られるとき、持病や療法食があるとき、子犬・シニア犬の量を決めるときは、自己判断せず獣医師に相談しましょう。
まとめ
ウェットフードは、ドライフードよりも水分が多く、同じ重さでもカロリーが低いフードです。量を決めるときは、重さではなく、ラベルのkcalをもとに、1日に必要なカロリーから逆算します。主食にする場合は「総合栄養食」の表示を確認し、ドライと組み合わせるときは、ウェットで賄う分だけドライを減らします。食いつきが落ちたときやシニア犬では心強い選択肢になりますが、食欲の低下や食べにくそうな様子が続くときは、フードの工夫だけでなく動物病院での確認が大切です。愛犬の体重と体型を見ながら、無理のない量を探してみてください。
参考情報源(2026年10月14日確認)
- 環境省「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」2-1 市販フードの種類と選び方・2-2 表示の見方(10〜13ページ)
- 環境省「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」4 フードの保存方法(15ページ)
- 環境省「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」5 体調管理について(16〜19ページ)
- ロイヤルカナン ジャポン「ドライフードとウェットフードは混ぜるべきか、愛犬のためのミックスフィーディング」(公開日の記載なし)
- VCA Animal Hospitals「Dry, Canned, or Semi-Moist: Food Choices for Dogs」(Canadian Academy of Veterinary Nutrition ほか獣医師の執筆、2024年3月20日更新)
- Hill’s Pet「Types of Dog Food: Wet, Dry, or Fresh Guide」(獣医師による監修、2026年6月29日公開)
- Hill’s Pet「What You Should Know About Pet Food Calories」(2022年12月2日公開)



