「避妊・去勢手術は、したほうがいいの?」「いつ受けるのがいいの?」「いくらかかるの?」と、決めたいのに調べるほど情報がバラバラで迷っていませんか。手術の時期の目安は体格や犬種で変わり、費用は動物病院ごとに違い、助成金は自治体ごとに違います。この記事は、獣医師監修の情報、環境省の資料、アメリカの動物病院グループVCAの案内をもとに、手術を考えるときに確認したい点を、時期・メリットとデメリット・費用・術後の過ごし方・助成金の探し方の順に整理しました。結論から言うと、「受けるかどうか、いつ受けるかは、犬種・予定体重・年齢・体調・暮らし方を見ながら、獣医師と相談して決める」のが出典に共通する考え方で、一律の正解はありません。かかりつけの獣医師に相談する前の整理にお使いください。
先に確認:手術の前に獣医師へ相談したい場合
次のような場合は、手術の時期や可否を自分で決めず、かかりつけの獣医師に相談しましょう。
- 持病がある、治療中の病気がある(麻酔をかけられるかどうかも含めて、獣医師が判断します。手術前には診察・血液検査・レントゲンなどで麻酔に耐えられるかを確かめると、アニコム損保の獣医師監修記事は説明しています)
- メスで発情(出血など)が始まった、または始まりそう(アニコム損保の記事では、手術の直前に発情が来たときは約1か月延期することが多いと説明しています)
- オスで精巣が陰嚢に降りてきていない(アニコム損保の記事は、腹の中に精巣が残ると腫瘍になる危険が高いとされ、手術を考える価値があると説明しています)
- 小型犬で乳歯が残っている(同じ麻酔の中で乳歯の抜歯も行うと、犬の負担を減らせると説明されています)
- 手術の予定日に、下痢・嘔吐・食欲低下がある(延期を相談します)
避妊・去勢手術とは:何をする手術か
環境省の資料によると、オスの去勢手術は精巣を摘出する手術、メスの避妊手術は卵巣と子宮を摘出する手術(卵巣子宮摘出)が一般的です。メスには、子宮を残して卵巣だけを摘出する方法もありますが、環境省の資料は、この方法は子宮の病気の予防にならないと説明しています。どちらも全身麻酔で行い、メスは開腹手術になります。傷が小さい腹腔鏡手術を行う動物病院もありますが、アニコム損保の記事は、費用が高くなり手術時間も長くなると説明しています。
なお、動物愛護管理法には、犬や猫がみだりに繁殖して適正に飼えなくなるおそれがある場合に、生殖を不能にする手術などで繁殖を防ぐよう飼い主が努める、という趣旨の規定があります(環境省資料)。手術を一律に義務づけるものではありません。条文の番号は改正で変わっているため、最新の条文は法令で確認してください。
時期の考え方:体格や性別で目安が分かれます
手術の時期は、出典によって書き方が異なります。日本の獣医師監修の記事は「生後6か月ごろ」を目安とする一方、VCAは予定体重で分けて説明しています。
| 区分 | 示されている目安 |
|---|---|
| メス(日本の獣医師監修) | 初回発情の前に行うのが目安。初回発情は生後6〜10か月ごろ、手術は生後6か月ごろが適期と説明(アニコム損保・石川美衣獣医師監修) |
| オス(日本の獣医師監修) | 性成熟が始まる生後5〜7か月ごろが目安。2kg未満の小さい犬は成長を待ち、「生後6か月以上・2kg以上」を目安にする考え方も紹介(アニコム損保・箱崎加奈子獣医師監修) |
| メス・成犬で約20kg(45ポンド)未満の見込み(VCA) | 初回発情の前、生後6か月ごろ |
| メス・成犬で約20kg以上の見込み(VCA) | 目安に幅があり、獣医師と相談して決める |
| オス・成犬で約20kg未満の見込み(VCA) | 生後6か月ごろ |
| オス・成犬で約20kg以上の見込み(VCA) | 成長が止まるまで待つ |
| 環境省の資料(平成15年のマニュアルの抜粋) | 時期はいつでも可能だが、生後6〜8か月ごろの最初の発情前が望ましく、それ以降はなるべく早く行うとされる |
※VCAの「45ポンド」は約20kgに換算しています。
意見が分かれやすい点
時期をめぐっては、次のように、メリットとデメリットの両方が示されています。
- 早く行う場合:メスは、初回発情の前に手術をすると乳腺腫瘍のリスクが大きく下がるとされます(VCAは、初回発情のあと2回目の前でも「大きく下がる」としています。数字は出典で異なるため、ここでは示しません)。
- 遅らせる場合:VCAは、大きくなる犬では、避妊・去勢が肥満、尿失禁(メス)、一部の犬種での関節の病気のリスクと関連するとしています。このため、大型犬では成長が止まるまで待つ、または獣医師と相談して決めるとしています。
- がんとの関係:VCAは、早い時期の手術ががんのリスクに与える影響は研究が進められている段階で、犬種によっては関連が見つかっていると説明しています。最新の研究の状況は獣医師に聞くよう勧めています。
- 遅くなりすぎる場合:アニコム損保の記事は、年齢が上がると臓器のまわりの脂肪が増えて手術が難しくなることがあると説明しています。
このように、犬種・予定体重・性別によって考え方が変わります。迷うときは、予定体重(親犬の大きさなど)と今後の暮らし方を伝えて、獣医師の考えを聞きましょう。
メリットとデメリットを並べて見る
メリットといわれていること
- オス・メス共通:長生きする確率が高くなるとされています(環境省の資料。VCAも、手術を受けた犬のほうが全体として長生きするとしています)。
- オス:精巣の病気(精巣腫瘍)や、前立腺の病気、肛門まわりの腫瘍の予防や軽減につながるとされます。交尾欲によるストレスが減る、マーキングが減る、他の犬への攻撃性が落ち着くといった行動面の変化も挙げられていますが、個体差があります。
- メス:卵巣・子宮の病気や子宮蓄膿症(VCAは、手術をしなければ命にかかわることが多い子宮の感染症と説明)の予防、乳腺腫瘍のリスクの低下、発情に伴う出血やストレスの軽減、望まない妊娠の防止が挙げられます。
デメリット・注意点といわれていること
- 全身麻酔や手術そのもののリスクがあります(出血や傷口の感染など。アニコム損保の記事は、太っている犬では出血のリスクが高くなると説明しています)。
- 太りやすくなります。ホルモンの変化で食欲が増え、消費するエネルギーが減りやすいためです。術後のごはんの考え方は「避妊・去勢後の犬のごはんは減らす?」、体重管理の全体像は「犬の肥満・体重管理ガイド」にまとめています。
- VCAは、手術に関連するものとして、尿失禁(メス)や、一部の犬種での関節の病気のリスクを挙げています。
- 環境省の資料(平成15年)は、ホルモンの欠乏による皮膚の病気が起こる場合があるものの、発症率はかなり低く、有効な治療法があると説明しています。
- 元に戻せません。手術後は、繁殖させたくなってもできなくなります。
- 費用がかかります(次の章)。
手術を受けずに繁殖を防ぐ方法として、環境省の資料は、オスとメスを分けて飼う方法を挙げています。ただし、これは外科手術を行わずに繁殖を制限する方法であり、手術で防げる病気の予防にはなりません。どの選択が合うかは、犬の状態や家庭の状況によって異なるため、獣医師と話し合って決めましょう。
費用の目安と、病院で差が出る理由
| 項目 | 目安・書かれていること |
|---|---|
| 避妊手術(メス) | 総額で3万〜8万円程度。動物病院、入院の有無、犬の大きさによって変わると説明(アニコム損保・石川美衣獣医師監修) |
| 去勢手術(オス) | 今回、現在の金額を確認できる一次の資料は見つけられませんでした。環境省の資料(平成15年)では、精巣摘出は「数千〜数万円」、卵巣子宮摘出は「数万円」と、オスのほうが低めに書かれています。20年以上前の資料のため、現在の金額は動物病院に確認してください |
| 腹腔鏡手術(避妊) | 傷口は小さいが、通常の開腹手術より費用が高く、手術時間も長いと説明(アニコム損保) |
| 検査・入院・薬・カラーなど | 手術の料金に含まれるか、別にかかるかは動物病院による |
日本獣医師会は、診療料金は各動物病院が自分で設定しており、病院によって差が出るのはやむを得ないこと、実際に支払う金額は診療項目ごとの金額を合算したものになることを説明しています。そのため、手術を申し込む前に見積もりをもらい、何が含まれているかを確認しましょう。
- 術前検査(診察・血液検査・レントゲンなど)
- 麻酔・手術・術後の痛み止めなどの薬
- 入院(日帰りか、1泊か)
- 抜糸や術後の再診
- エリザベスカラーや術後服
- 乳歯の抜歯など、同時に行う処置の費用
ペット保険は使える?
アニコム損保の公式ページは、予防目的の去勢・避妊手術(停留精巣による去勢を含む)は補償の対象にならないと説明しています。一方、乳腺腫瘍など病気の治療の一環として行う場合は、対象になる可能性があり、保険会社が個別に判断するとしています。保険会社や契約内容によって異なるため、加入している保険の約款や窓口で確認してください。
助成金の探し方:自治体によって金額も対象も違います
環境省の資料は、自治体によっては、不妊・去勢手術に助成金を出していると説明しています。環境省がまとめた「犬・猫の引取り等手数料及び不妊・去勢手術助成金」(令和4年3月31日現在)を見ると、犬も対象にしている自治体がある一方、猫(飼い主のいない猫を含む)だけを対象にしている自治体も多く、有無・金額・条件は地域で大きく異なります。そのため、「お住まいの市区町村名+犬 不妊去勢 助成」で検索するか、市区町村の担当窓口(保健所、動物愛護センター、環境・衛生の担当課など)に問い合わせて確認しましょう。
例:名古屋市(令和8年度)
名古屋市の公式ページ(2026年4月1日更新)では、犬の手術について次の金額が記載されています。
| 手術 | 名古屋市の補助 | 名古屋市獣医師会の補助 |
|---|---|---|
| 避妊(メス) | 3,200円 | 6,400円 |
| 去勢(オス) | 1,600円 | 3,200円 |
- 対象は、市内に住み、市内で犬や猫を飼っている人です。犬は狂犬病予防法に基づく登録が済んでいる必要があります。
- 手順は、名古屋市が指定する獣医師と手術の日を調整し、保健センターまたは動物愛護センターで補助券を受け取り、有効期間(交付日から14日間)内に手術を受けて、獣医師に補助券を提出する流れです。
- 補助券の交付は令和8年4月1日から、なくなり次第終了です。
※2つの金額の関係(合算されるのかなど)は、ページに説明がありません。利用する場合は、名古屋市の窓口に確認してください。名古屋市以外にお住まいの場合の金額や条件は、それぞれの自治体で異なります。
助成金は、手術の前に申請が必要な場合や、対象の動物病院が決まっている場合があります。手術の日を決める前に、窓口で確認しておくと安心です。
術後の過ごし方:病院の指示が最優先
術後の過ごし方は動物病院によって指示が異なります。ここでは、アニコム損保の獣医師監修記事とVCAの案内で共通している内容をまとめます。
手術前日・当日
- 手術当日は、麻酔中の嘔吐や誤嚥を防ぐため、食事(動物病院によっては水も)を制限します。VCAは、手術の前の晩から絶食する指示が一般的と説明しています。指示された時間を守りましょう。
- 手術直前のシャンプーやトリミングは、犬のストレスになるため避けたほうがよいとされています(アニコム損保)。
術後の数日〜抜糸まで
- 入院の有無は動物病院によって異なります。アニコム損保の記事では、メスの開腹手術は1泊が一般的で、腹腔鏡手術では日帰りの場合があると説明しています。VCAは、ほとんどの犬はその日のうちに帰宅すると説明しています。
- 傷口をなめたり引っかいたりしないよう、抜糸までエリザベスカラーや術後服を使います。
- 抜糸の時期は動物病院によって異なります。アニコム損保の避妊の記事は「1〜2週間」、VCAは約10日後の例を紹介しています。
- 抜糸までは激しい運動を避けます。普段どおりの散歩や室内での生活は基本的に問題ないとされますが、雨や泥の中の散歩は傷口が汚れて感染のもとになるため避けます(アニコム損保)。
- 傷口を濡らさないため、シャンプーは抜糸のあとまで待つよう指示されることが一般的です(VCA、アニコム損保)。
- 食欲、呼吸、おしっこの様子を確かめます(アニコム損保の記事では、退院後に確認する点として挙げています)。
傷口の赤み・腫れ・出血・分泌物、元気や食欲が戻らない、嘔吐が続く、おしっこが出ないなど、気になる様子があるときは、動物病院から示された連絡の目安に従い、早めに連絡しましょう。術後のごはんの量の考え方は、避妊・去勢後の犬のごはんの記事と、1日の量を計算するツールをご覧ください。
受ける前に、獣医師に聞いておきたいこと
- この犬の犬種・予定体重から見て、いつごろが適した時期か
- メスの場合、卵巣子宮摘出か卵巣のみか、開腹か腹腔鏡か
- 手術前にどんな検査をするか(麻酔の安全のため)
- 見積もりに何が含まれるか、入院・抜糸・再診の予定
- 小型犬で乳歯が残っている場合、同じ麻酔で抜歯できるか
- 手術後に太りやすいことを踏まえた、ごはんと運動の考え方
- お住まいの自治体の助成金の対象になる動物病院か
ワクチンなど、ほかの予防の予定とあわせて相談したいときは、「犬のワクチンは何を打つ?」、手術前の体調確認の考え方は「犬の健康診断、元気だからと先送りしていませんか」も参考にしてください。
まとめ:次の一歩
- 時期は、日本の獣医師監修の記事では生後6か月ごろが目安。ただし大きくなる犬では、成長が止まるまで待つ、または獣医師と相談して決めるという考え方もあります。
- 費用は、避妊で総額3万〜8万円程度という例があるものの、動物病院ごとに差があります。見積もりで含まれる項目を確認しましょう。
- 予防目的の手術は、アニコム損保の公式ページでは補償の対象外とされています。ほかの保険は契約内容を確認しましょう。
- 助成金は自治体ごとに有無・金額・条件が違います。住んでいる市区町村の窓口で確認しましょう。
まずは、かかりつけの動物病院で「この子の場合、いつごろがよさそうか」を聞くところから始めてみてください。この記事は一般的な情報の整理であり、診断や治療方針を示すものではありません。気になる症状や不安があるときは、獣医師に相談してください。
参考情報源(2026年10月25日確認)
- 環境省「資料3 繁殖制限措置」(平成16年6月作成。環境省「ペット動物販売業者用説明マニュアル(哺乳類)」平成15年などからの抜粋。古い資料のため、時期・費用の数字は参考として扱っています)
- 環境省「犬・猫の引取り等手数料及び不妊・去勢手術助成金」(令和4年3月31日現在)
- 名古屋市の犬・猫の不妊・去勢手術費の補助のページ(令和8年度、2026年4月1日更新)
- 公益社団法人日本獣医師会「診療料金」のページ(家庭飼育動物の診療料金実態調査。最新の掲載は令和3年度調査)
- アニコム損保「女の子の犬を迎えたら! 考えておきたい「避妊手術」」(石川美衣獣医師監修、2024年11月20日更新)
- アニコム損保「犬の去勢手術はいつすればいい? メリットやデメリットは?」(箱崎加奈子獣医師監修、2024年12月4日更新)
- アニコム損保の補償内容のページ(予防目的の去勢・避妊手術の補償に関する記載の確認)
- VCA Animal Hospitals「Planning for spay (female dogs)」(著者・更新日の記載なし)
- VCA Animal Hospitals「Planning for neuter (male dogs)」(著者・更新日の記載なし)



