アイリッシュ・ソフトコーテッド・ウィートン・テリアは、アイルランド原産の中型テリアです。名前の通り、小麦色(ウィートン)の柔らかく波打つ被毛が特徴で、農場で働いてきた歴史をもちます。この記事では、成り立ち、性格、日本の暮らしで気をつけたい点、迎える前に確認したいこと、かかりやすい病気までを、犬種クラブ、獣医師向けメディア、大学の資料をもとに整理します。
| 原産国 | アイルランド |
| 体高 | 43〜48cm程度(JKC犬種標準はオス46〜48cm) |
| 体重 | 14〜20kg程度(情報源により異なる) |
| 性格の傾向 | 陽気で友好的、愛情深く利口といわれる |
| 平均寿命 | 12〜14年程度(情報源により異なる) |
アイリッシュ・ソフトコーテッド・ウィートン・テリアの成り立ち
ジャパンケネルクラブ(JKC)の犬種標準によると、この犬種は、おもに小規模農場主が使う犬で、農場で害獣を駆除したり、作業を手伝ったりしました。アナグマやカワウソの猟など、困難な仕事にも長く使われてきたとされています。起源は他のアイルランドのテリアと経緯が似ているため、やや曖昧で、アイルランドの4つのテリア犬種の中で最も古いと考えられています。「ソフト・コーテッド・ドッグ」に関する文書から、少なくとも200年は存在していたと推測され、アイリッシュ・ケネル・クラブに正式公認されたのは1937年です。
VCA Animal Hospitalsによれば、農場で害獣を抑え、家を守り、家畜を追う万能の犬でした。誕生した時期は分かっていませんが、1700年代には犬種として成り立っていたとされています。1937年にアイルランドで犬種として認められると、当時の選手権では、アナグマ、ウサギ、ネズミに対する猟の力を示すことが求められたと紹介されています。アメリカには1946年に初めて渡り、アメリカのケネルクラブは1973年に公認しました。Wikipediaは、庶民が猟犬を持つことを禁じられていた時代の背景から「貧乏人のウルフハウンド」と呼ばれたこと、英国のケネルクラブの公認が1943年であることを紹介しています。PetMDは、犬種クラブの話として、ケリー・ブルー・テリアやアイリッシュ・テリアと共通の背景をもつが、詳しい起源は分からないと述べています。
アイリッシュ・ソフトコーテッド・ウィートン・テリアの性格
JKCの犬種標準では、元気で勇敢、性格がよく、飼い主に対して非常に愛情深く忠実で、とても利口とされています。頼りになる友で、攻撃的ではなく、防御能力に優れるとも書かれています。獣医師が確認したPetMDは、友好的で外向的、遊び好きで、人とすぐに絆を結び、飼い主のあとをついて回る犬が多いと説明しています。
人が大好きで、長い留守番は苦手
PetMDは、長時間ひとりで留守番することを好まないとしています。家族と一緒に過ごす時間が多い家庭向きの犬といえそうです。一方、VCAは、屋内での暮らしによく順応し、運動が足りていれば落ち着いて過ごせると述べています。
賢いが、頑固な面もある
PetMDとVCAは、飼い主に喜んでもらいたい気持ちがある一方で、頑固な面があると述べています。ほめて伸ばす訓練が向くとされ、PetMDは、早い時期の基本の訓練と根気が大切としています。Wikipediaは、厳しい方法は恐れや攻撃性を招くことがあるため、根気よく一貫した、前向きな訓練が向くと説明しています(一部の解説での記載)。
他の犬、猫、子どもとの暮らし
PetMDは、見守り、しつけ、子犬のころからの社会化があれば、子どもや他の犬とうまくやれることが多いとしています。獲物を追う本能のため、猫やネズミを追いかけることがありますが、早い時期の社会化と適切な対面で、小さな動物とも暮らしやすくなるとされています。犬と子どものやりとりは、常に大人が見守るよう勧められています。
吠え方と番犬の素質
PetMDは、知らない人が近づくと吠えることがあるものの、他のテリアより静かな傾向があるとしています。VCAは、警戒心があり、番犬として向くと述べています。Wikipediaは、訓練しないと吠えすぎることがあるとしています(一部の解説での記載)。
性格には個体差があり、ここで紹介した内容は犬種としての一般的な傾向です。迎える前に、ブリーダーや動物病院で、親犬や個体の様子を確認しておくと安心です。
身体的特徴
- 体高:JKCではオス46〜48cm、メスはオスより幾分小さいとされています。PetMDとVCAは17〜19インチ(約43〜48cm)、Wikipediaはオス45〜50cm、メス43〜46cm
- 体重:JKCではオス18〜20.5kg、メスはオスより幾分軽いとされています。PetMDとVCAは30〜40ポンド(約14〜18kg)、Wikipediaはオス14〜20kg、メス13.6〜15.9kg
- 被毛:下毛のほとんどない、柔らかく豊富な単層の被毛で、抜け毛は非常に少ない一方、からまりやすいとされます(PetMD、VCA)
- 毛色:鮮明なウィートンの色調で、明るいウィートンから金色がかった赤みを帯びた色調まで(JKC)
- 体型:頑丈で活動的な体格で、背腰部が短く力強い体つき。脚はひょろ長くも低すぎることもありません(JKC)
子犬の被毛は、赤、茶、マホガニー、白など濃い色で、マズルや耳は黒や濃い茶です。成長とともに色が薄くなり、おおむね3歳ごろまでに小麦色の成犬の被毛になるとWikipediaは説明しています(Wikipediaのみの記載)。成犬でも黒、白、濃い茶の差し毛が混じることがあります。
飼い方のポイント
運動
PetMDは、生涯を通してエネルギーが高く、毎日の散歩、遊び、頭を使う刺激が必要としています。VCAは、毎日の中程度の散歩や短いジョギング、囲いのある場所での走りを挙げ、走るのと狩りが好きなので、リードを外すのは安全に囲われた場所に限るよう述べています。ゲームや芸の練習などで頭を使わせると、満足しやすいと考えられます。
被毛のケア
被毛のブラッシングの目安は、PetMDでは毎日、最低でも週2回、VCAでは1日おきです。シャンプーはPetMDで月1回ほど(月2回を超えると皮膚の保護成分を落とすことがある)、VCAは約2か月に一度のシャンプーとトリミングです。プロのグルーミングは、被毛を長くしても短くしても4〜6週間ごとが目安とPetMDは述べています。VCAは、毛を約7.5cmにカットすると手入れが楽になるとしています。
目と耳のケア
PetMDは、涙やけがよく見られ、やさしい洗眼液で毎日洗い流すこと、目をしょぼつかせる、目やにの色が変わるなどの様子があれば受診することを案内しています。耳は1〜2週間に1回掃除し、赤み、におい、汚れがあれば炎症の可能性があるとされています。
食事の与え方
PetMDは、成犬は計量した食事を1日2回、子犬は1日3〜4回で規則正しく与えること、必要なカロリーは体格や避妊・去勢の有無、活動量で異なるため獣医師に相談することを述べています。
日本の住環境で気をつけたいこと
集合住宅での暮らしと来客への反応
VCAは、運動が足りていれば屋内の暮らしによく順応するとしています。一方で、知らない人が近づくと吠えることがあるため、玄関のチャイムや宅配便への反応が、集合住宅では気になる場面になりそうです。吠えたあとにほめて落ち着かせる練習や、玄関と居室の間に柵を置くなどの工夫が役立つと考えられます。日本の集合住宅では、管理規約で飼育できる犬の大きさや頭数が定められていることもあるため、契約前の確認が必要です(編集部の考察)。
梅雨から夏の湿気と暑さ
Wikipediaは、暑い天気で体温が上がりやすいと述べています(一部の解説での記載)。日本の梅雨から夏は、エアコンで室温と湿度を管理し、散歩は涼しい時間帯にずらすと安心です。また、毛が湿った状態が続くと、からまりやすい被毛のケアの負担が増えることが考えられるため、散歩のあとは、体や足を拭いて乾かし、ブラッシングで毛並みを整えておくと管理しやすくなります(編集部の考察)。
散歩後のお手入れと室内の汚れ
長めの被毛とひげは、雨の日や泥のある場所で汚れやすく、水を飲むとぬれやすいため、散歩後の足拭き、ひげまわりの拭き取りが毎日のお手入れになります。抜け毛は少ない犬種とされますが、抜けた毛がからまったまま残ることがあるため、こまめなブラッシングが必要です(編集部の考察)。
トリミングサロンの通い方
プロのグルーミングが4〜6週間ごとに必要とされる一方、ウィートンの被毛に慣れたサロンの数は地域によって異なると考えられます。迎える前に、近隣で通える店があるか、1回あたりの費用と所要時間を確認しておくと安心です(編集部の考察)。
迎える前に確認したいこと
- 被毛の手入れ:毎日〜週数回のブラッシングと、4〜6週間ごとのプロのグルーミングを続けられるか
- 運動の時間:毎日の散歩と遊びの時間を確保できるか
- 留守番の時間:長時間ひとりにならない生活か(PetMD)
- 他の動物との暮らし:猫や小動物がいる場合、慎重な対面と環境づくりができるか
- 親犬の検査:ペンシルベニア大学獣医学部の検査機関は、PLNに関係する遺伝子の検査を提供し、ブリーダーが親犬の結果を確認できます。PLE、アジソン病、腎異形成には現時点で遺伝子検査がないと説明しています。ブリーダーに、検査の有無と、親犬や血縁の病歴を確認することが望ましいです
- 定期的な検診:同検査機関は、すべてのウィートンに、年1回の血液検査と尿検査を勧めています。検診の費用と通院の予定も考えておくと安心です
- 費用の見通し:腎臓や消化管の病気は、検査や治療が長引くことがあるため、医療費の備えやペット保険の検討が安心です
- 家族の合意:しつけの方針や世話の分担を、家族全員で話し合えているか
- 法律上の手続き:91日齢以上の犬は、飼い始めてから30日以内に市町村へ登録し、毎年1回の狂犬病予防注射を受けさせる必要があります(厚生労働省)
- 終生飼養:動物愛護管理法では、終生飼養が明文化されています(環境省)
PetMDは、被毛が抜けにくいため、犬アレルギーのある人に向く場合があるとしつつ、アレルゲンのまったくない犬はいないと述べています。日本での飼育頭数や入手のしやすさ、価格は、今回の調査では確認できませんでした。
かかりやすい病気
アイリッシュ・ソフトコーテッド・ウィートン・テリアがかかりやすいとされている病気には、以下のようなものがあります。すべての個体がかかるわけではありません。気になる症状があれば、自己判断せず必ず獣医師に相談してください。
- タンパク漏出性腎症(PLN):腎臓からタンパク質が尿へ漏れ出る病気です。水をよく飲む、尿が多い、嘔吐や下痢などの様子が見られることがあります。PetMDによると、体内のタンパク質が減ると、水分がたまってむくみが出ることがあります。この犬種では遺伝的な背景があり、重くなったり命に関わったりすることがあるとされています。Wikipediaは、メスに多く、早く見つかれば食事の変更や薬で管理できる場合があると紹介しています。
- タンパク漏出性腸症(PLE):消化管からタンパク質が漏れ出る病気で、下痢、体重の減少、嘔吐などが見られることがあります。この犬種では家族性のものがあり、重くなる場合や命に関わる場合があるとPetMDは述べています。PLNと同時に起こることが多いとされ、PetMDとWikipediaが挙げています。
- アジソン病(副腎皮質機能低下症):副腎が、コルチゾールなどのホルモンを十分に作れない病気です。元気がない、嘔吐、下痢、力が入らないなどの様子が出たり治まったりし、重くなると突然倒れること(アジソンクリーゼ)があるとされています。治療は一生続く薬が一般的と、PetMDは述べています。
- 腎異形成:生まれつき腎臓の発達に異常があり、腎機能が早くから低下していく遺伝性の病気です。子犬のうちに見つかることが多く、水を飲む量と尿が多い、食欲が落ちる、成長が遅いなどの様子が見られます。診断には生検が使われ、支える治療で生活の質と寿命を保てる場合があるとPetMDは述べています。
- 甲状腺機能低下症:甲状腺ホルモンが不足し、代謝が落ちる病気で、体重の増加、元気の低下、被毛のもろさ、皮膚の感染などが見られることがあります(PetMDのみの記載)。血液検査で診断され、生涯にわたる薬で管理されます。
このほか、炎症性腸疾患、がん、食物や環境のアレルギー、アトピー性皮膚炎がWikipediaで挙げられています(一部の解説での記載)。水をよく飲む、尿が増えた、下痢が続く、体重が減る、元気がないなどの様子があれば、早めに獣医師へ相談してください。
平均寿命
PetMDとVCAでは12〜14年とされており、12〜14年程度がひとつの目安です。Wikipediaは、英国の2024年の調査で13.7年と紹介しています。個体差があり、飼育環境や健康管理によっても変わります。
まとめ
アイリッシュ・ソフトコーテッド・ウィートン・テリアは、人が大好きで陽気な、小麦色の被毛をもつ中型テリアです。毎日のブラッシングと定期的なグルーミング、十分な運動、留守番の時間への配慮、腎臓や消化管の病気に備えた定期的な検診が必要になります。性格や世話の負担、費用を踏まえ、家族全員で迎える準備ができているか確認してから検討することが望ましいです。気になる症状があれば、自己判断せず必ず獣医師に相談してください。
参考情報源
- ジャパンケネルクラブ「アイリッシュ・ソフトコーテッド・ウィートン・テリア」(犬種標準)
- PetMD「Soft Coated Wheaten Terrier」
- VCA Animal Hospitals「Soft Coated Wheaten Terrier」
- ペンシルベニア大学獣医学部 PennGen「Protein Losing Nephropathy (PLN) variants」
- Wikipedia「Soft-coated Wheaten Terrier」
- 厚生労働省「狂犬病に関するQ&A」
- 環境省「動物の愛護及び管理に関する法律」
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