ドッグフードの袋の裏を見て、「粗たんぱく質」「粗繊維」「灰分」と並んだ数字を前に、どこを見ればいいのか分からなくなったことはありませんか。ドライフードとウェットフードを見比べると、ウェットのたんぱく質の数字が小さく、栄養が少ないように見えて迷う、という声もあるかもしれません。表示の言葉は専門的で、迷うのは自然なことです。この記事では、ペットフード公正取引協議会と環境省の公的な説明、獣医師が執筆した記事(PETOKOTO、PetMD)、フードメーカー(ヒルズ)の見解の6種類の出典をもとに、パッケージの読み方をまとめました。結論から言うと、見る順番は「①目的の表示(総合栄養食か)→②成分表示の『以上・以下』→③原材料の並び順」で、水分の違うフードを比べるときは、水分を除いた「乾物換算」にそろえて比べます。ただし、表示から分かるのは「書かれている範囲」だけです。食物アレルギーが心配なとき、持病があるとき、便や皮膚の調子が気になるときは、自己判断せず、かかりつけの獣医師に相談してください。まず、下の「先に確認」から読んでみてください。
先に確認:表示だけで決めず、獣医師に相談したいとき
パッケージの表示は、フードを比べる助けになりますが、愛犬に合うかどうかまでは教えてくれません。次のようなときは、表示を読み比べる前に動物病院へ相談してください。
- 食物アレルギーが疑われる、または診断されている:原材料の表示を確認する場面ですが、除去する食材の選び方は獣医師の指示に従います(アレルギー対応フードの考え方はアレルギー対応フードの比較にまとめています)
- 腎臓・肝臓・心臓などの持病がある、療法食を指示されている:成分の数字の良し悪しは、病気や進み具合で変わります。療法食は、獣医師の指導のもとで使うものとされています(療法食の記事も参考にしてください)
- 食べたあとに吐く、便がゆるい・硬い、皮膚をかゆがるなどの様子が続く:フードを替える前に、原因を調べることが先です
- 子犬・妊娠中・授乳中・高齢で、食事の量や内容に不安がある:必要な栄養が時期によって違うため、個別の相談が向いています
まず見る:そのフードの「目的」は何か
ペットフード公正取引協議会は、フードの使用目的によって消費者に必要な情報が異なるため、公正競争規約で目的別に分類し、表示すべき項目を決めていると説明しています(2026年10月29日確認)。袋の見やすい場所に「総合栄養食」「間食」「療法食」などと書かれているので、成分を見る前にここを確認します。
| 目的の表示 | ペットフード公正取引協議会の説明(要点) |
|---|---|
| 総合栄養食 | 毎日の主要な食事として与えることを目的とし、そのフードと水だけで、指定された成長段階の健康を維持できるよう栄養バランスがとれたもの。対応する成長段階、体重ごとの給与量・給与回数を表示する。基準を満たすことは、分析試験または給与試験で証明する |
| 間食 | おやつ。給与限度量などを表示する。総合栄養食の基準を満たす間食もある |
| 療法食 | どのような状態のペットが対象かを表示し、獣医師の指導に基づいて与える旨の注意書きがある。フードによって病気を予防したり治療できるかのような表示はできない |
| その他の目的食 | 一般食・副食・サプリメントなど。一般食や副食では、1日に必要な栄養を満たすために別の栄養補給が必要である旨などを併記する |
毎日の主食にするなら、「総合栄養食」と書かれ、愛犬の成長段階(子犬・成犬・高齢)に合っているかを最初に見ます。トッピングやおやつ、一般食は、主食の代わりにはならない点に注意します(トッピングの量は「犬のごはんのトッピング、量はどれくらい?」を参照してください)。
成分表示の読み方:「以上」と「以下」の意味
ペットフード公正取引協議会によると、成分は、たんぱく質・脂質・粗繊維・灰分・水分の5項目について、保証できる値を重量百分比(%)で書きます。たんぱく質と脂質は「以上」、粗繊維・灰分・水分は「以下」を付けて表示します。協議会のページには「最大・最小」という言葉は出てきませんが、「以上」は下限、「以下」は上限を保証する書き方と読み取れます(PetMDも、たんぱく質と脂肪は最小値、繊維と水分は最大値で示されると説明しています)。つまり、表示の数字は実際に分析した値そのものではなく、「少なくともこれだけ」「多くてもこれだけ」という保証値です。
| 項目と表示のされ方 | 読むときのポイント |
|---|---|
| たんぱく質 ○%以上 | 下限の保証値(少なくともこの量)。「粗たんぱく質」と書いてもよいとされている |
| 脂質 ○%以上 | 下限の保証値。「粗脂肪」と書いてもよいとされている |
| 粗繊維 ○%以下 | 上限の保証値(多くてもこの量)。「粗」を外した書き換えはできない。測定法の関係で、実際の食物繊維量は粗繊維の約2倍とみておくとよいとPETOKOTOは説明している |
| 灰分 ○%以下 | ミネラルの総量を表す(「粗灰分」も可)。ミネラルのバランスまでは分からないため、PETOKOTOは比較の判断材料としては意味が薄いとしている |
| 水分 ○%以下 | フードのタイプの目安になる(下の表)。水分が多いほど、ほかの成分の%は小さく見える |
水分は、フードのタイプを見分けるヒントになります。アニコム損保(岸田絵里子獣医師監修)は、次のような目安を紹介しています。
| フードのタイプ | 水分の目安(アニコム損保) |
|---|---|
| ドライフード | 約10% |
| ソフトドライフード | 10〜30%程度 |
| セミモイストフード | 25〜35%程度 |
| ウェットフード | 約75% |
カロリー(エネルギー)は、ペットフード公正取引協議会の「成分」の説明に含まれる5項目には入っていません。1日に何グラム与えるかを決めたいときは、パッケージの給与量の目安とあわせて、「犬のご飯の量は1日何グラム?」の計算ツールも使えます。
たんぱく質の数字は「多いほど良い」とは限らない
PetMD(Jennifer Coates獣医師)は、成犬用で18%、子犬用で22.5%という米国のAAFCO(全米飼料検査官協会)の最低基準を紹介し、表示の値をこの基準と見比べる方法を説明しています。PETOKOTO(佐藤貴紀獣医師)も、脂質を含めてAAFCOの基準値を紹介しています。ただし、これは「最低限の目安」であり、数字が高いほど良いという意味ではありません。年齢・活動量・持病によって適した量は違うため、迷うときは獣医師に相談してください。
ドライとウェットを比べる:「乾物換算」で水分をそろえる
ウェットフードは水分が約75%あるため、表示のたんぱく質は数字が小さく見えます。PetMDは、水分量が大きく違うフード(ドライと缶詰など)の成分を、表示のまま比べてはいけないと説明し、水分を除いた「乾物ベース(dry matter basis)」に直して比べる方法を紹介しています。PETOKOTOも、水分が多いフードは他の成分が少なく見えるため、乾物換算で比べることが大切としています。手順は次の3つです。
- 乾物の割合を出す:100から、水分の%を引く
- 栄養素の%を乾物の割合で割る:たとえばたんぱく質の% ÷ 乾物の%
- 100をかける:これが乾物ベースの%になる
次の表は、手順を確かめるための架空の数字の計算例です(実在の商品ではありません)。
| フード | 表示(たんぱく質/水分) | 乾物ベースのたんぱく質 |
|---|---|---|
| ドライ(例) | 25%以上/10%以下 | 25 ÷ 90 × 100 ≒ 27.8% |
| ウェット(例) | 9%以上/78%以下 | 9 ÷ 22 × 100 ≒ 40.9% |
表示のままだと25%と9%で大きな差がありますが、水分を除くと27.8%と40.9%で、順番が入れ替わります。ただし、元の数字が保証値(たんぱく質は下限、水分は上限)なので、換算した値も目安です。PetMDは、炭水化物は「100から他の成分を引いて求める大まかな目安」で、正確な値ではないとも説明しています。乾物換算でそろえても「どちらが愛犬に合うか」までは決まらないため、あくまで比べる土台として使います。ウェットフードの与え方は「犬のウェットフードの量はどれくらい?」、ドライとウェットの違いは「ウェットフード・ドライフードの違いと選び方」もご覧ください。
原材料の読み方:並び順の決まりと、見方の違い
原材料は「使用量の多い順」に書かれる
環境省のペットフード安全法Q&Aによると、ペットフード安全法そのものは原材料名の記載順序を特に定めていません。一方、公正取引委員会の認定を受けた公正競争規約・施行規則では、使用量の多い順に記載すると定められており、環境省も「原則、多い順に記載することが望ましい」としています(2026年10月29日確認)。ペットフード公正取引協議会は、原材料の書き方として次の3つを認めています。
- 1つずつ個別に書く:「コーン、チキンミール、小麦粉、ビーフオイル…」のように、重量の多い順に並べる
- 分類ごとにまとめて書く:「穀類(コーン、小麦粉)、肉類(チキンミール)、油脂類(ビーフオイル)…」のように、分類名のあとに個別名を括弧で書く
- 分類名だけを書く:「穀類、肉類、油脂類…」のように、分類名のみ。協議会は、食物アレルギーのあるペットが増えていることなどから、このような表示はほとんどないようだと説明しています
食物アレルギーが気になるときは、「肉類」などの分類名だけでは、何の肉かが分かりません。個別の原材料名まで書かれているかも、確認のポイントになります。
「先頭が何か」をどこまで重視するかは、出典で見方が分かれる
並び順の決まりは確認できましたが、「だから先頭が○○のフードがよい」と言えるかどうかは、出典で書き方が違いました。
| 出典 | 原材料の見方 |
|---|---|
| PETOKOTO(獣医師執筆。運営会社はフードも販売) | 原材料は多い順に並ぶため、先頭が穀類(小麦粉、とうもろこしなど)のフードは避けるよう勧めている。「〇〇ミール」は部位が混ざるため、何が使われているか分かりにくい点が問題としている |
| PetMD(Jennifer Coates獣医師) | 最初の数項目が、良質なたんぱく源や炭水化物源(肉、魚、ミール、穀物、ジャガイモなど)かを確認するよう勧めつつ、細部にこだわりすぎないよう述べている |
| ヒルズ(フードメーカー) | 原材料も栄養素も大切だが、体は原材料そのものではなく栄養素を吸収する。原材料リストだけでは適否を判断できず、特定の原材料が入っているかどうかでフードの良し悪しは決まらないとしている |
PETOKOTOとヒルズは、フードを販売する会社の見解でもあります。編集部としては、原材料の並び順は「何がたくさん使われているかを知る手がかり」として読み、それだけで優劣は決めない、という使い方が無理がないと考えます。穀類の是非は「グレインフリーフードとは?」で整理しています。
添加物は「用途名」とあわせて書かれる
ペットフード公正取引協議会によると、甘味料・着色料・保存料・増粘安定剤・酸化防止剤・発色剤といった目的で使う添加物は、「酸化防止剤(ミックストコフェロール、ローズマリー抽出物)」のように用途名をあわせて書きます。香料などは一括名で書くことも認められています。また、ペットフード安全法では、エトキシキン、BHT、BHAの合計150μg/g以下(犬用のエトキシキンは75μg/g以下)など、一部の添加物に上限値が決められているとされています。表示を読んで気になる添加物があるときは、自己判断で避けるより、メーカーの説明や獣医師の意見を確かめるのが確実です。
「無添加」「ナチュラル」「高たんぱく」の言葉の見方
パッケージの目立つ場所には、成分表示とは別に、特徴を表す言葉が並びます。ペットフード公正取引協議会は、誤解を招きやすい言葉を「特定用語」として公正競争規約で指定し、使うための条件を決めていると説明しています。主なものは次のとおりです。
| 言葉 | 表示するための条件(協議会の説明の要点) |
|---|---|
| 「高」「豊富」「低」「ゼロ」など | 同種の商品と比べてどのくらい差があるかを数値で書く。または、客観的な数値基準で根拠を説明でき、その根拠を書く |
| 「無添加」「不使用」 | 何が無添加なのか原材料名などを併記し、製造の全工程で使っていないことが確認できる場合に限る |
| 「ナチュラル」「ネーチャー」 | 化学的合成物と着色料を使っていないものに限る(総合栄養食などは、栄養バランス上欠かせないビタミン・ミネラル・アミノ酸にだけ使い、その旨を併記するなどの条件つきで可) |
| 「推奨」 | 専門家の多数に認められた方法の試験結果や、専門家・専門機関の見解、学術文献など、根拠を書く |
| 「受賞」 | 受けた時期と授賞者の名称を書く |
こうした言葉があるときは、言葉だけで判断せず、「何と比べて」「何を使っていないのか」「根拠は何か」が書かれているかを探してみてください。書かれていなければ、メーカーに問い合わせて確かめることもできます。なお、これらは表示のルールの説明であり、特定の商品が優れていることを示すものではありません。
表示を読んでも分からないこと
- 愛犬が喜んで食べるか、お腹に合うか:食いつき、便の状態、皮膚の調子は、実際に与えて様子を見るしかありません。切り替えるときの進め方は「ドッグフードの切り替え方」にまとめています
- 1日に何グラム与えるか:パッケージの給与量は目安です。体型や運動量で調整が必要なことがあります
- 開封後の状態:賞味期限は、適正に保管された未開封の製品について設定されたものとされています(環境省Q&A)。保存方法は「ドッグフードの保存方法と賞味期限の読み方」を参照してください
- 原材料の品質や産地の細かい違い:原産国名は、最終加工を終えた国を書くルールのため、原料の産地とは限りません(環境省Q&A)
パッケージを読む順番のまとめ
- 目的:毎日の主食なら「総合栄養食」で、愛犬の成長段階(子犬・成犬・高齢)に合っているか
- 成分:「以上・以下」は保証値と知ったうえで、水分を見てフードのタイプを確認する
- 比較:ドライとウェットなど水分が違うものは、乾物換算にそろえて比べる
- 原材料:多い順に並ぶことを手がかりに、アレルギーが心配なら個別の名前まで書かれているかを見る
- 特徴の言葉:「無添加」「高たんぱく」などは、何と比べたのか・根拠が書かれているかを確かめる
- 最後は実際の様子:食いつき、便、皮膚、体型を見て、気になる変化があれば獣医師へ
まとめ
パッケージの表示には、ルールに沿って書かれた情報が詰まっています。目的の表示で「主食に使えるか」を確かめ、成分は「以上・以下」の保証値として読み、水分の違うフードは乾物換算で比べ、原材料は並び順を手がかりにしつつ、それだけで優劣を決めない。この順に見ていくと、数字や言葉に振り回されにくくなります。原材料の見方は、出典によって重視する点が違いました。表示を読んでも迷うとき、食物アレルギーや持病が心配なとき、体調に変化があるときは、自己判断せず、かかりつけの獣医師に相談してください。フード選びの基本は「ドッグフードの選び方」もあわせてご覧ください。
参考情報源(2026年10月29日確認)
- ペットフード公正取引協議会「表示の基礎知識 03.ペットフードの目的について」
- ペットフード公正取引協議会「表示の基礎知識 07.成分(保証分析値)について」
- ペットフード公正取引協議会「表示の基礎知識 08.原材料について」
- ペットフード公正取引協議会「表示の基礎知識 09.添加物について」
- ペットフード公正取引協議会「表示の基礎知識 10.不当表示について」
- 環境省「ペットフード安全法Q&A」
- PETOKOTO「【獣医師執筆】ドッグフードの成分表の見方を解説!表示義務や正しく比較する方法」(運営会社はフードも販売)
- PetMD「Comparing the Nutritional Profiles of Dog Foods」(Jennifer Coates, DVM、2016年1月1日公開)
- PetMD「How to Choose the Best Dog Food」(Jennifer Coates, DVM、2023年11月8日公開)
- ヒルズ「ドッグフードの原材料と栄養素の最適なブレンドとは」(フードメーカーの見解)
- アニコム損保 犬との暮らし大百科「犬の1日に必要な水の量とは?体重別の目安と飲ませ方の工夫をご紹介」(岸田絵里子獣医師監修、2026年1月28日更新。保険会社の情報ページ)



