愛犬がお尻を床にこすりつけながら進む、お尻をしきりに舐める、抱っこしたらお尻のあたりが臭う――原因が分からないと、心配になりますよね。結論は3つです。①こうした様子は、肛門の左右にある「肛門腺(肛門嚢)」に分泌液がたまっているサインの可能性があります。たまりやすい犬は、1か月に1〜2回程度のお手入れが必要なケースが多いとされる一方、排便のときに自然に出ている犬は、特にお手入れの必要はないとされています。②お尻の周りが赤い・腫れている・出血している・触ると嫌がる、といった様子があるときは、触らずに動物病院へ。③自宅で絞るのが不安なときは、無理をせず、トリマーや動物病院のスタッフに教えてもらう方法があります。
この記事では、肛門腺のしくみ、たまりやすい犬の特徴、受診の目安、自宅で絞るときの流れと注意点を、獣医師監修の資料をもとに整理しました(情報確認日:2026年10月26日)。検索でも「犬 おしり 床にこする」「犬 おしり 床に擦り付ける」「犬 おしり臭い」「犬 おしりを気にする」「犬 おしりから血」といった候補が並ぶ(同日確認)ように、お尻まわりの悩みは飼い主さんが気にしやすいテーマです。なお、「絞る頻度の最新の実施率調査」や「何日続いたら受診」という共通の基準は、今回確認した資料には見当たらなかったため載せていません。商品名・メーカー名も出さずに、グッズは種類と選ぶ観点だけを紹介します。
まず確認:動物病院を受診したいサイン
アニコム損保の獣医師監修記事(岸田絵里子獣医師)では、次のような様子が見られるとき、肛門嚢炎や肛門嚢破裂を起こしている可能性があるため、動物病院を受診するよう案内されています。自宅で絞ろうとせず、受診してください。
- 肛門の周りが赤い・腫れている
- 肛門の周りを過剰に舐めたりかじったりする
- お尻や後ろ足を触ろうとすると嫌がる・怒る
- 自分のしっぽを追いかけてぐるぐる回る
- 排便のときに鳴く・痛がる
- 便や、座っていた場所に血や膿がついている
- 食欲や元気がない
また、英国の動物福祉団体PDSAのページでも、肛門腺の膿瘍(膿のたまり)が疑われるときはできるだけ早く獣医師に連絡すること、自分で治療しようとしないことが案内されています(英国のペット向けの情報です)。夜間や休日に気づいたときのために、夜間・救急に対応できる動物病院の連絡先を日ごろから控えておくと、慌てずに済みます。
肛門腺とは? お手入れが必要な犬・不要な犬
犬の肛門を後ろから見て時計の中心にたとえると、おおよそ4時と8時の位置に、左右1対の袋(肛門嚢)があります。袋の中には、においの強い分泌液がたまっていて、犬ごとににおいが違うため、お互いを見分けたり縄張りを主張したりするのに使われるとされています。興奮して吠えたとき、怖がったり驚いたりしたときに、分泌液が出てしまうこともあります(アニコム損保)。
通常は、排便のときに肛門の筋肉(肛門括約筋)が縮み、袋が圧迫されて、分泌液は便と一緒に出ます。この仕組みでスムーズに出ている犬は、分泌液が過剰にたまることはなく、特にお手入れの必要はないとされています。一方、分泌液が硬い、出口の管や開口部が狭い、肛門の筋肉の力が弱いなどの理由で自然に出にくい犬は、定期的に絞るお手入れが必要になることがあります。つまり、「すべての犬に絞るお手入れが必要」というわけではなく、犬によって違います。
たまりやすいとされる犬の特徴
| 特徴 | 資料に書かれている内容 |
|---|---|
| 小型犬(チワワ・トイ・プードルなど) | 肛門の筋肉の力が弱いために、たまりやすい場合がある。大型犬に比べると、小型犬・中型犬のほうがたまりやすいと言われる(アニコム損保) |
| 運動不足の犬、膝蓋骨脱臼など関節の問題がある犬 | 注意が必要とされる(アニコム損保) |
| 高齢犬 | 筋力の低下で排出がうまくいかず、たまりやすくなることがある。若いころにたまらなかった犬でも、年齢とともに分泌液の状態が変わり、たまりやすくなることがある(アニコム損保) |
| 肥満の犬 | 開口部が肛門の内側に入り込んで出しにくくなる、脂肪で袋が圧迫されにくい、といった理由が挙げられている(アニコム損保)。PDSAも、肥満の犬は肛門周りの筋肉が弱く空にしにくいとしている |
| 下痢や軟便を伴う腸の病気がある犬 | 排便のときに袋が圧迫されにくいため、たまりやすくなる(アニコム損保) |
| 生まれつきの構造・体質 | 構造上出にくい犬や、分泌液が硬い・大量にたまりやすい犬がいる(アニコム損保) |
体重や便の状態が関わるとされているため、体重が気になる場合は犬の肥満・体重管理の記事、下痢や軟便が続くときは下痢・嘔吐の記事、高齢犬のケア全般は老犬介護の記事も参考にしてください。
お尻をこするのは、たまっているサイン?
アニコム損保の記事では、分泌液がたまってきているサインの可能性があるものとして、次の3つが挙げられています。
- お尻を床にこすりつけながら移動する
- お尻を気にして舐める
- 肛門腺のにおいがする
こうした様子が見られるときは、早めに絞ってあげるようにと案内されています。ただし、お尻を気にする仕草は、すでに炎症を起こしているときにも見られます(アニコムの病気大百科の肛門嚢(腺)炎のページでも、肛門を舐める・咬む・床に擦りつける・自分の尾を追いかけるといった仕草が症状として挙げられています)。前の章の受診サインがないかを確認し、あるときは絞ろうとせず受診してください。また、今回確認した資料は肛門腺に関するものです。お尻を気にする原因が肛門腺とは限らないため、仕草が続くときや、触ろうとして嫌がるときは、獣医師に相談してください。
お手入れの頻度の目安
頻度は、資料によって書き方に幅があります。
| 資料 | 書かれている頻度の目安 |
|---|---|
| アニコム損保「犬との暮らし大百科」(岸田絵里子獣医師監修) | 排便時に自然に出る犬はお手入れ不要。たまりやすい犬は、1か月に1〜2回程度のお手入れが必要なケースが多いようだとされる |
| アニコム損保「みんなのどうぶつ病気大百科」(お手入れ・絞り方のページ) | たまってしまう犬は、個体差はあるものの月1回程度絞ってあげることが必要とされる。シャンプーのときに絞ると、お尻の汚れやにおいをまとめて洗い流せるとしている |
どちらも、「たまりやすい犬」について書かれた目安です。たまってくる早さは犬によって違うため、トリミングのときなど時期を決めて行う方法もありますが、前の章のサインが見られたときは早めに絞るようにと案内されています。年齢とともにたまりやすくなることがあるため、時々触ってたまっていないか確認するとよい、とも書かれています。自分の犬に絞るお手入れが必要かどうかは、かかりつけの獣医師やトリマーに相談すると確実です。
アニコム損保のデータ:肛門嚢炎は年齢とともに増える傾向
アニコム損保「みんなのどうぶつ病気大百科」の肛門嚢(腺)炎<犬>のページには、「病気のかかりやすさ(%)」が年齢別に掲載されています(2026年10月26日に原本で確認)。代表的な年齢を抜き出すと、次のとおりです。
| 年齢 | 病気のかかりやすさ |
|---|---|
| 0歳 | 0.221% |
| 1歳 | 0.42% |
| 3歳 | 0.562% |
| 5歳 | 0.622% |
| 7歳 | 0.636% |
| 9歳 | 0.743% |
| 10歳以上 | 0.776% |
0歳の0.221%から、10歳以上の0.776%へ、年齢とともに高くなる傾向が見られます。同ページでは、平均の通院は年2回程度、通院1回あたりの平均単価は3,020円程度とされています。これは同社の保険金支払データに基づく数字で、犬全体の発症率ではありません。また、治療費は症状の程度(皮膚が破れて縫合が必要かなど)で大きく変わります。
今日からできること
1. まず様子を確認する
お尻を床にこする、舐める、においがする、のいずれかに気づいたら、受診サイン(赤み・腫れ・出血・触ると嫌がる・食欲低下など)がないかを確認します。受診サインがあるときは、絞らずに動物病院へ連絡してください。
2. 自宅で絞るときの流れ(アニコム損保の記事の要約)
受診サインがなく、トリマーや動物病院のスタッフに教えてもらったうえで自宅で行う場合の、一般的な流れです。初めてのときや難しいときは、無理に自己流で始めず、やり方を教わってからにしてください。
- 用意するもの:ティッシュ、ビニール袋。必要に応じて、使い捨て手袋、お尻を拭く体拭き用のウェットティッシュやフォーム(慣れないうちは素手のほうが分かりやすいという記載もあります)
- しっぽを持ち上げて、肛門が見えるようにします
- 左右の袋を、親指と人差し指で圧迫して絞ります。肛門の左右を下から持ち上げて、肛門の穴に向かって押し上げるイメージとされています。分泌液が勢いよく飛び散ることがあるため、肛門をティッシュで押さえながら行います(髪や服につくととても臭うため注意)
- 体拭き用のウェットティッシュやフォームなどで、お尻をやさしく拭いてきれいにします
3. やってはいけないこと・注意点
- 赤く腫れている、出血がある、触ろうとすると痛がるときは、触らずに受診します
- 全部を完全に出そうとして、力を入れすぎない:無理をすると炎症や痛みの原因になります。過剰にたまりすぎていなければ大丈夫とされています
- 家で飼い主さんが頑張りすぎて、犬が痛みや恐怖を感じないようにする:後々、お尻のお手入れが大変になることがあります。うまくいかないときは無理をしないで相談してください
- 腰痛や関節痛がある犬は、立たせたりしっぽを持ち上げたりされるのを嫌がることがあります。この場合も動物病院で相談してください
- 外から絞るのが難しい犬もいます:肥満気味の犬、お尻周りの筋肉が発達していて袋が奥深くにある犬、しっぽの短い犬、分泌液が硬い犬では、動物病院で肛門から指を入れて中から絞る方法が必要になることがあります
- 肛門嚢にできる腫瘍(肛門嚢腺癌など)もあります。肛門嚢がいつも腫れている、排便が難しい、といった様子があれば、動物病院で診てもらってください
4. 絞るお手入れをプロに頼む選択肢もあります
アニコム損保の記事では、上手く絞れないときは、トリミングサロンや動物病院にお願いするか、絞り方を教えてもらうとよいと案内されています。シャンプーやトリミングのときに定期的に絞ってもらう方法もあります。実施の可否や料金はお店・病院によって異なるため、予約の際に確認してください。シャンプーの頻度や洗い方はシャンプーの記事、においが気になるときはにおいケアの記事も参考になります。
受診するとどうなる? 治療の流れ
アニコム損保の病気大百科では、肛門嚢炎の治療として次のものが挙げられています。
- 肛門嚢を絞って、たまりすぎている分泌物を排出させる
- 炎症がひどい・化膿しているときは、薬(外用薬・内用薬)を使う
- 皮膚が破れているときは、消毒や外科的な縫合が必要なこともある
- 再発が続くときは、肛門嚢そのものを手術で摘出することもある
PDSAのページ(英国)では、膿瘍は強い痛みを伴い、すぐには絞れないことがあるため、痛みを抑える抗炎症薬と、感染を抑える抗生物質を短期間使うことがあるとされています。すでに破裂している場合は痛みが少なく、膿が自然に出ることが多いとも書かれています。また、治療中は、傷口を清潔に保ち、お尻を舐めさせないようエリザベスカラーを使うといった家庭でのケアが案内されていますが、具体的な方法は獣医師の指示に従ってください。
アニコム損保の記事では、肛門嚢炎や肛門嚢破裂は比較的よく見られるものの、一度起こすと繰り返すこともあるとされています。また、治療をして治ったあとも、お尻の痛みがトラウマになって、その後のお手入れが難しくなることがあるとされています。
グッズ選びのポイント(商品名は載せません)
絞るお手入れそのものに、特別な道具が必須というわけではありません。アニコム損保の記事で挙げられているのは、身近な日用品です。
| 種類 | 選ぶ観点 |
|---|---|
| ティッシュ・ビニール袋 | 分泌液は飛び散ることがあり、においも強いため、肛門を覆える量を用意しておく |
| 使い捨て手袋 | 手に付くのが気になるときに。素手のほうが分かりやすいという記載もあるため、慣れてから選んでもよい |
| 体拭き用のウェットティッシュ・フォーム | 犬の体を拭く用途として販売されているものを選ぶ。お尻の皮膚が赤い・傷があるときは使わず、受診する |
これらはお手入れの手助けで、肛門嚢炎などの病気を治したり防いだりするものではありません。お手入れに自信がないときは、道具をそろえる前に、トリマーや動物病院のスタッフに相談する方法があります。
よくある疑問
Q. 絞らないと、必ず病気になる?
いいえ。アニコム損保の記事では、排便のときに自然に出ている犬は、分泌液が過剰にたまることがなく、特にお手入れの必要はないとされています。一方で、たまりやすい犬が絞らずにいると、炎症や化膿(肛門嚢炎)、皮膚が破れる状態(破裂)になることがあるとされています。自分の犬がどちらのタイプかは、獣医師やトリマーに相談してください。
Q. 分泌液の色が黄色や茶色、黒っぽいのは異常?
アニコム損保の記事では、分泌液の性状は液体から粘土状、粒状、固形状まで、色も黄色・茶色・灰色・黒など、犬によっていろいろで、同じ犬でも年齢や体調で変わることがあるとされています。色だけで良し悪しは決められません。血や膿が混じる、お尻の周りが赤い・腫れているときは受診してください。
Q. 吠えたときや、驚いたときに急にくさくなった。病気?
アニコム損保の記事では、興奮して吠えたときや、恐怖・驚きを感じたときに、分泌液が出てしまうことがあるとされています。その場で出るだけなら、すぐに病気とは言えませんが、お尻を気にする仕草が続くときは相談してください。
Q. トリミングで絞ってもらったあと、お尻を舐めるようになった
絞り方が合わなかった、すでに炎症があった、など原因はさまざまで、記事だけでは判断できません。お尻を舐める・出血がある・赤く腫れているといったときは、サロンに伝えたうえで、かかりつけの動物病院に相談してください。
Q. 若いころは必要なかったのに、シニアになってからたまるようになった
アニコム損保の記事では、高齢になると筋力の低下で排出がうまくいかず、たまりやすくなることがあるとされています。若いころにたまらなかった犬でも、年齢とともに分泌液の状態が変わることがあるため、時々お尻の様子を確認するとよいと案内されています。健康診断のときに相談する方法もあります(健康診断の記事)。
まとめ
お尻を床にこする、舐める、においがするのは、肛門腺(肛門嚢)に分泌液がたまっているサインの可能性があります。排便のときに自然に出ている犬は、特にお手入れの必要はありませんが、たまりやすい犬は、1か月に1〜2回程度(資料によっては月1回程度)の絞るお手入れが必要なケースが多いとされています。ただし、赤み・腫れ・出血・触ると嫌がる・排便時に痛がる・血や膿がつく・食欲がない、といった様子があるときは、触らずに動物病院へ。自宅で絞るときは、力を入れすぎず、うまくいかなければ無理をせず、トリマーや動物病院のスタッフに教えてもらったり、お願いしたりしてください。
気になる症状が続く場合は、自己判断せず獣医師に相談してください。



