昨日までは食べていたのに、今日はごはんの前で止まってしまう。年を重ねた愛犬の食が細くなると、「年のせいかな」「でも、どこか悪いのでは」と迷いますよね。結論は3つです。①老犬のごはん離れには、加齢による変化のほか、口の痛み、関節の痛み、腎臓などの内臓の病気、環境の変化などがあり、「年のせい」と決めつけると病気を見落とすことがあるとされています。②水も飲まない、元気がない、吐く・下痢をしている、体重が減ってきた、といったときは、様子を見ずに動物病院へ連絡を。③そうしたサインがなければ、フードを温める・ふやかす、回数を分ける、食器の高さを変える、といった工夫があります。
この記事では、シニア犬がごはんを食べないときの受診の目安、原因の見分け方、家庭でできる工夫を、獣医師が監修・執筆した資料をもとに整理しました(情報確認日:2026年10月28日)。検索でも「高齢犬 食べない 何日」「高齢犬 食べない 吐く」「高齢犬 食べない 飲まない」といった候補が並ぶ(同日確認)ほど、多くの飼い主さんが迷うテーマです。なお、「何日食べなければ受診」という単一の基準や、「何日で食欲が戻る」「あとどのくらい」といった見通しの数字は、確認した資料に共通の値がなかったため載せていません。年齢を問わない「ごはんを食べない」の全般は犬がごはんを食べない原因と受診の目安で解説しています。商品名・メーカー名も出さず、グッズは種類と選ぶ観点だけを紹介します。
まず確認:動物病院に連絡したいサイン
PDSA(英国の動物慈善団体、獣医師・動物看護師が執筆)は、愛犬が24時間以上何も食べていないときは、できるだけ早く獣医師に診てもらうことが大切としています。第一アイペット(鷺島祥子獣医師監修)は「丸1日〜2日何も口にしないときは注意が必要」とし、特に子犬や高齢犬は脱水を起こしやすいため、水も飲まないときは早めの対処が必要と書いています。資料により幅がありますが、シニア犬では「1日待つ」を前提にせず、次のどれかに当てはまるときは、時間を置かずに電話で相談するほうが安心です。
- 水も飲まない(脱水のおそれ)
- 元気がない、ぐったりしている
- 嘔吐や下痢がある(下痢・嘔吐の記事も参考にしてください)
- 体重が減ってきた
- 口を気にする、よだれが多い、食べたそうなのに口の前でやめる(口の痛みのサイン。PDSA・第一アイペット)
- 白目や歯ぐき、皮膚が黄色っぽい(PDSAが挙げる黄疸のサイン)
- 水をよく飲む、おしっこの量や回数が増えた(慢性腎臓病で見られることがあるとされる。アニコム損保)
- 歩くのを嫌がる、触られるのを嫌がる(病気の異変の例として挙げられている。PETOKOTO)
- 人の食べ物・薬・洗剤・小さな物を口にした可能性がある(誤食したときの記事も確認してください)
夜間や休日に気づいたときのために、夜間・救急に対応できる動物病院の連絡先を、あらかじめ控えておくと慌てずに済みます。
老犬が食べない主な理由:年のせいだけとは限りません
PETOKOTO(佐藤貴紀獣医師)は、シニア犬の食欲低下を「病気や老化で食欲がない」場合と、「食欲はあるのに食べない」場合に分けて考えています。後者は、必要な量をすでに食べている、運動量が少なくてお腹がすいていない、においや食感が好みに合わない、落ち着いて食べられない、といったことが含まれます。特に目立つ原因を、様子別に整理しました。
| 気づきやすい様子 | 考えられること | 次の一手 |
|---|---|---|
| 食べたそうなのに口の前でやめる、片側で噛む、よだれ、口臭 | 歯周病・口内炎・口の中の腫瘍など、口の痛み | 動物病院で口の中を確認 |
| 水をよく飲む、おしっこが増えた、吐く、体重が減る | 腎臓など内臓の病気の可能性 | 早めに受診 |
| 立ち上がりや歩くのを嫌がる、触られるのを嫌がる | 関節などの痛みの可能性 | 受診。食器の高さも調整 |
| 量が少しずつ減るが、元気で体重・体型は大きく変わらない | 加齢による変化の可能性 | 回数を分ける、ふやかす、定期的に体重を記録 |
| 引っ越し・来客・音の変化のあとから | ストレス・落ち着かない環境 | 静かな場所で与え、変化を減らす |
| おやつやトッピングはよく食べる | 好みの変化、または量が多すぎる | 1日の量を確認し、体調に不安があれば相談 |
表は目安であり、犬の状態や病気の有無はここから判断できません。気になるときは動物病院で確認してください。
口の痛み:歯周病・口内炎など
第一アイペットは、口内炎・歯周病・口腔内腫瘍などで口の中に痛みや違和感があると、食欲不振になることがあるとしています。食べるスピードが遅くなる、食べにくそうにする、よだれが増える、口からの出血、口臭がきつくなる、といった様子が目安です。PDSAも、歯石やぐらつき・欠けた歯、歯ぐきの炎症、膿(うみ)のたまり(膿瘍)が、食べるのをやめるほどの痛みになりうるとしています。歯のケアは歯周病・口臭ケアの記事も参考にしてください。
腎臓など内臓の病気
アニコム損保(太田麻衣子獣医師監修、2026年1月23日更新)では、慢性腎臓病は初期に症状がほとんどない期間があり、その後、飲水量やおしっこの量が増える多飲多尿が見られ、進行すると体重減少、嘔吐、貧血などが見られるとされています。病気の段階(ステージ)の説明では、軽度の段階でも食欲不振や無気力が見られることがあり、中等度では食欲不振に加えて嘔吐・下痢・口内炎などが見られるとされています。そのため、「食べない」に加えて、水を飲む量やおしっこの変化も、受診時の大切な情報になります(飲水量の目安は飲水量の記事も参照)。PDSAは、肝臓や腎臓の病気、ホルモンの病気、心臓・肺の病気、感染症なども食欲低下の原因になりうるとしています。第一アイペットは、食欲不振を起こす病気として感染症、寄生虫、胃腸炎、膵炎、腎不全、肝不全、腫瘍、子宮蓄膿症(避妊手術をしていない女の子)などを挙げ、原因は多く、自分で見分けるのは難しいとしています。
関節などの痛み
PDSAは、犬は体のどこかが痛いと食べなくなることがあり、「機嫌が悪い」「静か」といったあいまいな様子しか出ない場合もあるとしています。第一アイペットは、関節炎などの痛みの可能性にも触れています。食器の前まで行く、首を下げる、といった動作そのものがつらい場合もあります。足腰の様子は関節のケアの記事や、散歩で歩かないときの記事も参考になります。
加齢による変化
第一アイペットは、高齢になると代謝が落ちて必要なカロリーが自然に減る、噛む力が弱くなる、嗅覚・味覚・消化吸収能力が衰える、といったことが食欲不振の一因になるとしています。PETOKOTOも、運動量が減って食べる量が減るのは、体重や体型に急な変化がない限り正常な変化とされるとしています。一方で、第一アイペットは、高齢の犬では食べないことを「年のせい」にして病気を見落としてしまう可能性があると注意しています。「食べる量が減った」だけでなく、体重が減っていないかを月に1回でも量って記録しておくと、受診のときに役立ちます。体型の見方は体重管理の記事にまとめています。
ストレス・環境の変化、ヒート(避妊手術をしていない女の子)
引っ越し・家族構成の変化・騒音などで食べなくなることがあります(PDSA)。避妊手術をしていない女の子では、ヒートに伴い食欲が落ちることがあるとされています(第一アイペット)。環境の変化については引っ越しストレスの記事も参考にしてください。認知症が気になる場合は犬の認知症の記事もご覧ください。
受診のサインがないとき、家庭でできる工夫
ここからは、上の「すぐ連絡したいサイン」に当てはまらず、水は飲めていて、元気もある場合の工夫です。工夫を試してもなかなか食べない、ほかの様子が気になる場合は、時間を置かずに相談してください。
1. 温める・ふやかす
第一アイペットは、ドライフードをふやかして柔らかくする、温めてにおいを立たせると食べてくれることがある、としています。ふやかすことは、水分が不足しがちな高齢犬の水分補給にもなるとされています。PETOKOTOも、ふやかす・ウェットフードにする・温めて香りを立たせる、を工夫として挙げています。やけどしないよう、人肌程度に冷ましてから与えてください。具体的な方法はドライフードのふやかし方の記事やウェットフードの与え方の記事で解説しています。
2. 回数を分ける・食器の高さを変える
- 1回のごはんの量を減らして、回数を増やす(第一アイペット)。回数の考え方は食事回数の記事も参考になります
- 首を下げなくて済むよう、少し高さのある食器台を使う(第一アイペット)。食べやすい高さに調整する(PETOKOTO)
- 静かで落ち着ける場所で食べさせる(PETOKOTO)
- 1日の量が体重に合っているか見直す。もう十分食べていて、食べたがらないだけの場合もある(PETOKOTO)。計算はごはんの量の計算ツールが使えます
3. 病気で療法食を使っている場合
アニコム損保の記事では、腎臓病の療法食は犬に好まれないこともあるとされ、ぬるま湯でふやかす・温めて香りを出す、リンゴやサツマイモなど犬の好むものを少量混ぜる、といった例が紹介されています。ただし、ささみなどのたんぱく質を与えすぎると尿毒症につながるおそれがあるため、トッピングは少量にとどめるとされています。療法食の種類やトッピングの可否は病気や段階で変わるため、必ずかかりつけの獣医師に確認してください。
4. 無理に食べさせない・自己判断で強制給餌をしない
第一アイペットは、内臓系の病気が原因のとき、無理やり食べさせると症状を悪化させてしまうことがあるとしています。PETOKOTOは、食べにくそうなシニア犬への工夫として、手のひらに乗せて与える、シリンジ(注射器の針のない筒)で直接与える方法を挙げています。ただし、シリンジなどで与える量・方法・回数は、病気の有無や誤嚥(食べ物が気管に入ること)のリスクも関わるため、獣医師の指示を受けてからにしてください。
5. 見解が分かれる点:「食べなければ下げて待つ」方法
第一アイペットとPETOKOTOは、甘えやわがままで食べないと考えられる犬に、時間を決めて片付け、おやつやトッピングを控えて次の食事を待つ方法を紹介しています。PETOKOTOは、この方法は健康で、痩せていないことが前提で、丸2日食べないときは専門家に相談するよう書いています。一方でPDSAは、24時間以上食べない場合はすぐ診察を受けるよう案内しています。シニア犬では病気が隠れている可能性があり、食べない時間が長引くリスクもあるため、この方法は、獣医師に体調を確認してもらってからと考えるほうが安全です。
グッズで食事環境を整えるときの選び方
グッズは、「病気ではないと確認できたあと」に、食べやすい環境を整える補助として考えるのが基本です。商品の宣伝文句に頼らず、次の観点で選ぶと失敗しにくくなります。
- 高さのある食器台:愛犬の体格と、立った姿勢で首を下げすぎない高さか。安定していて、倒れにくいか
- 滑りにくいマット・食器:足元が不安定だと食事の姿勢を保ちにくいため、食器の下に敷く物も見直す観点。食器が動きにくく、洗いやすい素材か
- ふやかしやすいフード・ウェットタイプのフード:柔らかい食感が食べやすい場合がある。ただし、病気で食事の管理が必要なときは獣医師の指示に従う。種類の違いはシニア犬向けフードの記事でも整理しています
- 床の滑り止め:食器まわりだけでなく、歩く床も確認する。床の滑り止めの記事も参考になります
なお、食欲を戻す・高めるとうたう健康食品やサプリメントは、効果が確かめられているとは限らないため、この記事では紹介していません。使いたい場合は、獣医師に相談してください。
動物病院に電話・受診するときに伝えること
第一アイペットは、原因の見極めのポイントとして、食欲が落ちているだけかまったく食べないか、おやつも食べないか、いつから続いているか、ほかに普段と違う様子はないか、生活に変化はなかったか、を挙げています。これらに加えて、次のような点をメモしておくと、電話でも伝えやすくなります。
- 食欲が落ちているだけか、まったく食べないか。ごはんだけか、おやつも食べないか
- いつから、どれくらい続いているか(最後にしっかり食べた時間、1回の量)
- 水は飲めているか、おしっこ・うんちの回数や量、色の変化
- 嘔吐・下痢・元気のなさ・震え・咳などがないか(あれば動画や写真)
- 体重の変化、口臭・よだれ・口の気にする様子
- 最近の変化(フードやおやつ、環境、薬、避妊手術の有無・ヒートの時期)
高齢の犬は、半年に1回を目安に健康診断を受けられると良い、と第一アイペットは案内しています(健康診断の記事も参照)。検査や治療(点滴など)は、獣医師が犬の状態を診たうえで判断します。
よくある質問
Q. 老犬が1日食べないくらいなら、様子を見てもいいですか?
資料により書き方が分かれます。第一アイペットは「丸1日〜2日何も口にしないときは注意が必要」とし、PDSAは24時間以上食べないときはできるだけ早く診察を、としています。シニア犬は成犬より体力の余裕が少なく、水も飲まない・元気がない・吐くなどのサインが1つでもあるときは様子見をせず、迷うときも電話での相談が安心です。
Q. 水は飲むけれど、ごはんだけ食べません。
水が飲めているのは一つの安心材料ですが、原因が口の痛みや内臓の病気のこともあります。食べる様子(口の前でやめる、よだれなど)、体重の変化、おしっこの量を確認して、気になる点があれば受診してください。
Q. おやつや好きなものなら食べます。あげてもいいですか?
食べないよりは、との考え方もあります。一方で、「食べなければおいしいものが出てくる」と学習する可能性があるとして、慎重な見方もあります(第一アイペット・PETOKOTO)。シニア犬は病気が隠れていることもあるため、まず原因を確認し、与える内容や量は獣医師に相談するのが安全です。
Q. 先の見通しが気になって、不安です。
食べなくなった犬が「あとどのくらい」といった見通しは、病気や状態によって大きく異なり、今回確認した資料にも共通の数字はありませんでした。ここでは目安を示すことはできません。不安なときは、かかりつけの獣医師に、現在の状態と今後の見通し、家でできるケアを相談してください。看取りや介護の全般は老犬の介護の記事も参考になります。
注意点
- 「年のせい」と決めつけない:食欲の低下が続くとき、体重が減っているときは、病気のサインのことがあります
- 自己判断で薬や人用の食品を与えない:人の薬やサプリメント、味付けされた食品は、犬には合わないことがあります
- この記事は一般的な情報です:診断や治療に代わるものではありません
気になる症状があれば、自己判断せず獣医師に相談してください。
まとめ
老犬がごはんを食べないとき、まず見るのは「食べない時間」だけでなく、水を飲めているか、元気があるか、吐く・下痢などがないか、体重が減っていないかです。これらに当てはまるものがあれば、様子を見ずに動物病院へ連絡してください。当てはまらないときは、温める・ふやかす、回数を分ける、食器の高さを変える、静かな場所で与える、といった工夫があります。ただし、強制的に食べさせることや、「食べなければ下げて待つ」方法は、獣医師に確認してからにしましょう。迷ったときは、電話で相談することから始めてください。
気になる症状が続く場合は、自己判断せず獣医師に相談してください。
参考情報源(いずれも2026年10月28日に確認)
- 第一アイペット「犬がごはんを食べないときの原因と対処法、病気かどうかのチェック方法を紹介」(鷺島祥子獣医師監修、2026年4月23日更新)
- PETOKOTO「【獣医師執筆】シニア犬(老犬)がごはんを食べない7つの原因と対処法を解説」(佐藤貴紀獣医師、2026年9月1日更新。フード事業者が運営するメディアです)
- アニコム損保 犬との暮らし大百科「犬の腎臓病 原因や症状、治療法まで解説【獣医師監修】」(太田麻衣子獣医師監修、2026年1月23日更新)
- PDSA(英国)「My dog isn’t eating properly」(獣医師・動物看護師が執筆、2018年11月公開。英国の犬向けの助言です)



